旧領回復の渦

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 新しい政権ができると、武士は各地から京都にのぼってきた。しかも六月十五日、今回の戦いで奪われた所領は旧主に返し、以後の土地所有権の変更は、天皇の裁断によるとの命令がでたからである。つづいて朝敵の所領没収令・旧幕府の誤判再審令・旧幕府の建立した寺院の寺領没収令などを発布する。ついに全国的な旧領回復の渦がまく。
 
 【遠江国衙】事態の容易ならぬことを知った政府は、七月二十三日、「鎌倉幕府の与えた土地でも、北条高時らの謀反人と、その同類以外の知行地であれば承認するから、遠近を問わずに上京し、農業をおろそかにすることのないようにせよ」と諸国に宣言した。この命令書は、遠江国衙(国府)にもきたはずである。新政の一歩後退である。