【直轄領】幕府の財政の基盤はまず直轄領である。しかしその数量や規模は正確には不明である。直轄地のうちには将軍の主食などを納めるように特定されたところもある(桑山浩然「室町幕府経済の構造」『日本産業史大系2』所収)。
【公納役】つぎは守護に対する御公納役である。守護の領地におうじ、年貢の五十分の一を銭で納めさせる制度である。また守護の領内から人夫を徴発し、土木工事などに奉仕させた。
【酒屋役 土倉役】幕府は明徳(めいとく)四年(一三九三)十一月、酒屋や土倉(どそう)に対する課税を恒常税にきりかえた。幕府政所の一年間の経費六千貫文を彼らに負担させ、その有力なものを納銭方(のうせんがた)という政所の役人にとりたて、必要により献金する義務をつけた。
この土倉・酒屋に対する課税は、これからのち永く幕府の大きな財源となった。しかし戦国時代になると、この課税はますます重くなるので、課税できる土倉はへってくる。
【遠江国茜染商人】遠江国の茜(あかね)(赤色染料)を京都で販売した「遠江国茜染座」商人十六人は、京都に住み幕府政所の公人(くにん)となり、土倉・酒屋役の催足などをつとめ、京都での茜取引の独占を許されていた(内閣文庫所蔵『古文書』第十四集)。
【段銭 棟別銭】幕府は皇居の修理・天皇の即位・社寺の修理など臨時に多額の費用が必要なときに段銭(たんせん)をかけた。全国の田畑のすべてに一段(一〇アール)ごとに銭を何文と割りあてる。また家屋の棟数におうじて棟別銭(むなべちせん)もかけた。
【国役】段銭や棟別銭は臨時課税であるが、しだいに恒常税となり、しかも月に何度もかけるようになる。段銭は幕府の段銭奉行があつかい、その国の守護たちに徴収させた。守護たちは荘園にいりこみ、「国役(くにやく)」という名目でかってに段銭をかけた。
【商業税】なお糸(絹糸)・綿(真綿)・塩合物(しおあいもの)(塩乾魚)などの営業税、柴公事(しばくじ)・織手方機(はた)別役・洛中洛外の風呂公事役などの公事銭、関税・京都五山(ごさん)に対する課銭などがある。
【分一徳政令】幕府は徳政令をしばしば公布したが、ついにそれによって利益を吸いあげることを考えた。すなわち享徳三年(一四五四)をはじめとして徳政令をだすと、債務者・債権者のどちらでも、債務(債権)の十分の一とか五分の一を納めたものに対して債権を破棄したり、確認したりした。これを分一(ぶいち)徳政令という。これによる収入額は文明十二年(一四八〇)の徳政令で約千貫文もあった。