村櫛荘如意寺の大般若経

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 【興徳庵】村櫛荘内山の曹洞宗如意寺の住持元能庵主は、同寺に襲蔵する初巻から四百巻にいたる写本の大般若経(最古は弘安十年、一二八七、府中の中尾寺に於てである)を同所の興徳庵に寄付した。住持の麗金首座(しゅそ)は慶喜し、諸檀に勧化し、また自分で費用をだして、二百巻を謄写したので、六百巻を全備することになった。そのうちで本市または隣接地の寺院で書写されたのは別表のとおりである(順序は『静岡県史料』による。破損したことなどで、後代に補写した分もある)。いずれも曹洞宗の寺院であり、その活動振りがみられる。
 
 【寄居村民の転読】村櫛の寄居(未詳)の村民たちは、毎月協力して財力をだし、元能にちなむ吉日をえらび、大日堂(当市村櫛町随縁寺)でこの地の鎮守の八王子社(当市村櫛町八柱神社)(「袴田文書」『静岡県史料五』所収)を拝し、僧を招き、この大般若経を転読することになった。【巻末の跋文】六百巻の巻末には永亨三年(一四三一)十月瑞□山□□寺(どこにあてるか不明)の前住持太古光清が以上の趣旨の跋文を書いている。仏教史だけでなく地方史の貴重な史料である。【妙照寺】この大般若経は慶応四年(一八六八)すなわち明治元年九月十一日、小笠郡吉沢村(小笠郡菊川町)の全村民が資金を拠出して購入し、いま菊川町の曹洞宗妙照寺に所蔵されている(毎巻の巻首には購入金寄進者の姓名を書き入れてある)。

大般若波羅蜜多経奥書(小笠郡菊川町 妙照寺蔵)

(表)
巻号地名寺院はいずれも
曹洞宗
年号その他寺の在否現在の地名
516巻第595村櫛庄 乙君長福禅寺応安4.1.12(1371)長福寺当市村櫛町
517巻第511村櫛庄 乙君長福禅寺応安5.5.16(1372)大願主沙門霊光   〃
巻第522村櫛庄 乙君長福禅寺応安5.3.5(1372)大願主比丘霊光   〃
518巻第491補智郡笠子郷東福寺永徳2.10中澣(1382)東福寺浜名郡湖西町
巻第264蒲御厨神明宮永徳3.11.28(1383)大勧進比丘宗珀蒲神明宮当市大蒲町
519巻第74村櫛庄大山寺嘉慶3.2.15(1389)大山寺当市大山町
巻第73村櫛庄大山寺   〃
521巻第16多米寺応永5(1398)大願主浄泰多米寺
522巻第42刑部落合村宝珠庵応永10.3.13(1403)宝珠庵引佐郡細江町
巻第72刑部宝珠庵応永13.2.27(1406)   〃
523巻第76刑部御厨落合村宝珠禅庵応永13.3.16(1406)   〃
巻第90村櫛庄内山如意寺応永13.3.28(1406)勧進比丘沙門逆翁叟如意寺当市庄内町
525巻第182刑部宝珠庵応永13.閏6.15(1406)宝珠庵引佐郡細江町
526巻第230大山寺応永14.12.2(1407)大山寺当市大山町
巻第234引佐郡井伊郷勝楽寺応永14.4.12(1407)勝楽寺引佐郡引佐町
巻第260刑部落合宝珠庵応永15.6.22(1408)宝珠庵引佐郡細江町
527巻第136刑部御厨近福禅寺応永16.閏3.20(1409)近福寺引佐郡細江町
528巻第600村櫛庄内山如意禅寺永享3.10.28(1431)勧進比丘逆翁叟如意寺当市庄内町
530巻第50伊那佐郡刑部御厨宝珠禅庵永正9.12.13(1512)勧進比丘沙門逆翁叟宝珠庵引佐郡細江町
532巻第3村櫛庄海厳寺延宝3.5吉日(1675)施主小林平左衛門海厳寺当市
533巻第8村櫛荘宝永寺延宝3.5吉祥日(1675)宝永寺当市
巻第10宿芦禅寺延宝3.5下旬(1675)宿芦寺当市庄内町
534巻第51村櫛清伝寺延宝3.7下旬(1675)清伝寺当市
巻第106堀江村安福禅寺延宝3.6下旬(1675)施主松下文佐衛門安福寺当市
巻第451宿芦精舎延宝4.3(1676)宿芦寺当市庄内町
535巻第66宿芦衆寮元禄10.8.13(1697)   〃
巻第256堀江宿芦元禄12.11吉祥日(1699)   〃
536巻第329藤谷山宿芦元禄12.10.22(1699)   〃
巻第350藤谷山元禄12.10.26(1699)   〃
巻第578村櫛村清伝寺元禄12.7.10(1699)清伝寺当市
537巻第436村櫛村清伝寺享保16.1吉日(1731)   〃
巻第437村櫛村清伝寺享保16.2吉日(1731)   〃