農業

613 ~ 614 / 706ページ
 その地方にむく蔬菜類が栽培されはじめ、特産物として知られるようになった。京都・奈良をはじめ、大きな消費都市の近郊などでは、いろいろの野菜がつくられ、一部は公事(くじ)として領主に送られる。この公事も生産物でなく、銭で納めるようになる。【振売商人】野菜は市場や店舗で販売され、また振売商人によって売られた。【品種】このころの蔬菜には、瓜・茄子(なす)・大根・蕪(かぶら)・牛蒡(ごぼう)・人参(にんじん)・菎蒻(こんにゃく)・茎立菜(くきたちな)・根芋(ねいも)・芋茎(いものくき)・山芋(やまいも)・里芋・唐芋(甘藷)などがある。また桃・栗・梨・柿・柚(ゆず)・葡萄(ぶどう)・橘・柑子(こうじ)・蜜柑・枇杷(びわ)・柘榴(ざくろ)などの菓子も商品であった。
 
 【遠州木綿 遠州茜 流通商品の主体】絹・麻・苧(からむし)などの繊維原料品、その染料の藍・茜(あかね)・紫・紅花(べにばな)、燈油原料の荏胡麻(えごま)、塗料の漆、嗜好品としての茶なども重要な農作物であった。茜は、駿河・遠江で産出し、木綿は三河・遠江で栽培され、京都などに送られた。室町時代から戦国時代にかけての新しい傾向は、穀物・蔬菜・加工原料の農産物が流通商品の主体になったことである。

田おこし 洛中洛外図屏風 部分(東京 町田満次郎氏蔵)