【撰銭禁令】同じ一文(いちもん)でも善悪いろいろの銅銭が流通している。しかも流通している貨幣の量が不足していた。このため室町幕府は、標準の銅銭を法定し、これに差額をつけて悪銭を通用させ、みだりに悪銭をのぞく行為、つまり撰銭(えりせん)を禁止した。【今川氏】この法令は、幕府だけでなく大内氏をはじめ今川氏も公布した。今川氏真は永禄六年(一五六三)に制札できめたようにし、みだりにえらんではならないと定めた(『今川判物証文写』)。この禁令は遠江国でも適用されたはずである。
【禁令のねらい】室町幕府の禁令のねらいは、貿易業者・資本家とむすび、中級の輸入銭を善銭に格上(かくあ)げして、その撰銭を禁止し、利益をはかろうとするにある。しかし小名主が貨幣で年貢を納めるようになると、撰銭の禁令は、よりはげしくなった(奥野高広「前期封建制と撰銭禁令」『国民生活史研究』2所収)。