解題・説明
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色紙の言葉はオーギュスト・コント(Auguste Comte、1798年~1857年)の言葉である。コントはフランスの社会学者・哲学者で、はじめサン=シモンに師事した。やがてサン=シモンと袂を分かったコントは、その思想を6巻からなる『実証哲学講義』(1830−42)としてまとめ、公刊した。同書の中では諸科学のヒエラルキーが説明され、最も新しい科学として〈社会学〉が位置づけられた。このためコントは一般に〈社会学の祖〉の名を与えられている。 福士幸次郎が引用しているこの言葉は、本田喜代治『コント研究 その生涯と学説』(芝書店、1935)でも「保守主義の坂を急速に下降しつつあつたコントが「生者は元来――そして益々――死者に支配されるものである」といふ格言を「人間秩序の基礎原理」としてその過去及び歴史尊重の傾向を一層顕著にしたことは怪しむに足りない。」と引用されているように、コントの言葉としてはよく知られたものであった。(村山龍)
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