解題・説明
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『詩経』は儒教の経典「五経」の一つで、西周から春秋時代の詩305篇を収めた中国最古の詩集。諸国の民謡を集めた「風」(国風)、朝廷音楽の「雅」(小雅・大雅)、宗廟祭祀の雅楽である「頌」(周頌・魯頌・商頌)の三部からなる。前漢の毛亨らの伝えたテキストである詩経『毛詩』(これに付された注を毛伝という)に、後漢の鄭玄が注釈(鄭箋)を付けたものが広く流布した。この毛伝鄭箋は、唐代の孔穎達らの奉勅撰による『五経正義』の一つである『毛詩正義』に敷衍され、詩経の標準的テキストとして定着した。 市史掲載の写真は『詩経古註再校』である。これは毛伝鄭箋の流れをくむ刊本で、江戸中期の儒学者である井上通煕(蘭台、1705~1761)により校刊された5冊本の刊本である。「延享四年(1747)丁卯九月」の刊記をもち、江戸の書肆、浅倉久兵衛・須原茂兵衛・藤木久市・前川六左衛門が名を連ねている。(武井紀子)
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