解題・説明
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14世紀半ば過ぎ頃に成立したと推測される歴史書。作者は未詳。保元の乱のち、後醍醐天皇の没した暦応2年(延元4年、1339)までの事柄を扱う。書名の「保暦」も、このことにちなむ。鎌倉時代~南北朝時代前半の政権について、漢字仮名交じり文で記す。特に鎌倉幕府の動静に詳しく、他の書物には見えない出来事や経緯を記しており、その点から作者は武家方の者であろうと考えられている。本書では、津軽安藤氏の安藤五郎(五郎三郎)と安藤又太郎との間で惣領をめぐる争論があったこと、加えて蝦夷が合戦に及んだことが述べられ、これが鎌倉幕府滅亡に至る出発点となったと位置づけられている。(武井紀子)
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