《ジャパンを支えるエージグループの強化》


 「日本協会は2002年を『ユース強化元年』として、長期的視野にたったエージ別の強化に取り組む」という。ユース統括上田昭夫の言葉を紹介しよう。
 「…02年度としては、世界に合わせてエージレベルでの強化を前提に、これまでの『高校代表候補』の呼称を『U19候補(高校3年生)』に変更。新たに『U17候補(高校2年生)』を集めて夏合宿を始めた。…U19はアジア大会、U19世界選手権(ジュニア世界選手権)のメンバー、さらに高校代表海外遠征にも参加するため実力をチェックすることがメインに」と、日本協会機関誌で説明している。
 要するに高校日本代表の3年生はU19、高校2年生はU17と、IRB主催の大会規定に沿って、年齢による組み分けの必要に迫られたというわけである。このほか2002年(平成14)年6月にはIRB主催の「U21WORLDCUP」と称する新たなエージ大会が南アフリカのヨハネスブルクで開かれ、IRBから参加を呼びかけられた日本協会は急ぎ「U21日本代表」を編成して参加。急造チームながら第1、2戦のアルゼンチンニュージーランドに敗れたものの、イタリアフィジーに勝ったあと、9-10位決定戦で再びイタリアを41-29の大差で破って世界ランキング9位を確保している。
 U17にはじまり、U19、U21、そしてU23にいたる代表チームの細分化は、IRBの主導で行われてきたことになるが、U17とU19を組み合わせた、いわゆる高校日本代表の海外活動はすでに1971(昭和46)年3月のカナダ遠征をその初めとする。全国高校大会50周年を記念して行われたものであるが、この代表メンバーをIRB流のエージグループに分けてみると、高校3年に相当するU19が23人中20人。残り3人が高校2年生となっているから、まさにいまでいうU19日本代表と呼んでもおかしくない。日本ラグビー界のエージグループ育成は、この時点で始まっていたということである。ただ、これら高校の日本代表制度が日本協会の一貫した代表チーム強化体制の中に「U19」として組み込まれ、また海外の大会に参加したのは、1996(平成8)年のU19アジア大会(台湾)からとなっている。この年度をプレ大会(台湾)とする見方があれば、第1回大会と位置付ける記述もあるが、2005年12月11日から17日までパキスタンのラホールで開催された「2005 Asian U19 Rugby Tournament」の詳報を伝える日本協会機関誌「FEB.2006」号は、和訳の大会名称を「第10回U19アジア大会」としている。そこでこの記述にしたがって大会の開催年を逆算していくと第1回大会は1996年にたどり着く。それともう1点は、日本協会に第1回大会参加の記録が残っていないこと。この2点から日本協会80年史では1996(平成8)年開催の台湾での開催を第1回大会とした。
 初参加のU19日本代表はなかなか好調。いきなり第2回大会(香港)を制したが、第3回大会(台湾・台北)は決勝の韓国戦を9-9で引き分けて同時優勝。翌第4回大会(台湾・高雄)も決勝の相手は韓国となったが、ここでは28-12で快勝し、前年度の決着をつけるとともに3連覇を達成する。U19日本代表がよかったのはここまで。「U19世界選手権(ジュニア世界選手権)」のアジア出場枠がかかることになった2000(平成12)年の第5回大会(スリランカ)から3大会連続で韓国に敗れる冬の時代がつづいた。幸い世界選手権の出場権は前年度優勝の実績で事無きを得たとはいえ、U19日本代表にとってはアジアで初めて経験する試練の3年間といえるだろう。ようやく2003(平成15)年の第8回大会(マレーシア・クアラルンプール)で韓国から王座を奪還したのも束の間。翌第9回大会(中国・昆明)では10-28と完敗したものの、昨2005(平成17)年の第10回大会(パキスタン・ラホール)では、今度は日本が25-3と韓国をノートライに抑えて前年の雪辱をはたしている。U19アジア大会の10年は日本韓国の主導権争いに終始してきたアジア独自の現象そのものといえる。
 「U19世界選手権(ジュニア世界選手権)」に日本が参加したのは、1998(平成10)年にフランスのツールーズで開催された第30回大会からである。もともとこの国際大会はFIRA(国際アマチュアラグビー機構)というフランスに本部を置く組織が主催してきたが、U19日本代表が初参加した第30回ツールーズ大会からIRBとの共催となり、日本のほか、カナダアメリカが参加。翌第31回大会(ウェールズ、スイス)ではニュージーランドイングランドも加わり、世界的なユースの大会へと発展をとげている。2004(平成16)年の第36回大会からはIRB単独の主催に変わった。
 U19日本代表の大会成績をみてみると、初参加の第30回大会は11位。翌年の第31回大会ではディビジョンAの13位にランクされたが、前回の11位のU19日本代表が13位扱いとなったのは、日本選手団団長川村幸治によると「ニュージーランドイングランドの参加による」とのこと。グループ分けではカナダ(前回4位)、ニュージーランド(5位扱い)、ルーマニア(前回10位も今大会の扱いは12位)と同じ組となったが、結果は初戦のカナダに3点差、ルーマニアに2点差で敗れてグループ4位。その後のグルジア、ウルグアイ戦には連勝して最終結果は13位と前大会から2つ後退してしまった。