テストNo.328 リポビタンDチャレンジ2016 テストマッチ スコットランド代表 第2戦

English 写真 機関誌
平成28年(2016)6月25日 G:味の素スタジアム R:マリウス・ミトレア(ITA)
日本代表 16-21 スコットランド代表
No.567★328 リポビタンDチャレンジ2016 スコットランド代表第3回来日 第2戦
2016年6月25日 G:味の素スタジアム R:マリウス・ミトレア(ITA)
日本代表16-21スコットランド代表
1稲垣 啓太(パナソニック)1391ローリー・サザーランド
C2堀江 翔太(パナソニック)3122スチュアート・マキナリー
3畠山 健介(サントリー)3モーリー・ロー
4大野  均(東芝)1T04リッチー・グレイ
5小瀧 尚弘(東芝)1G05ジョニー・グレイ
6ツイ ヘンドリック(サントリー)2PG36ジョシュ・ストラウス
7金  正奎(NTTコム)0DG07ジョン・バークレー
8アマナキ・レレィ・マフィ(NTTコム)8ライアン・ウィルソン
9茂野 海人(NEC)0T0C9ヘンリー・ピアゴス
10田村  優(NEC)0G010ルアーリー・ジャクソン
11笹倉 康誉(パナソニック)1PG411ショーン・マイトランド
12立川 理道(クボタ)0DG012ピーター・ホーン
13ティム・ベネット(キヤノン)13マット・スコット
14マレ・サウ(ヤマハ)18814トミー・シーモア
15松田 力也(帝京大)15スチュアート・ホッグ
交代【日】垣永真之介(サントリー)③、小野晃征(サントリー)⑬、木津武士(神鋼)②、ホラニ龍コリニアシ(パナソニック)⑥、内田啓介(パナソニック)⑨、谷田部洸太郎(パナソニック)④、三上正貴(東芝)①、パエア・ミフィポセチ(NTTドコモ)⑮ 【ス】フレザー・ブラウン②、ゴードン・リード①、WP・ネル③、グレイグ・レイドロー⑨、ジョン・ハーディー⑧、ヒュー・ジョーンズ⑩、ティム・スウィンソン⑦、ショーン・ラモント⑪
得点:T茂野、G田村、PG田村3

 最終戦の味の素スタジアムには3万人を超える観客が集った。自陣からの攻撃でSH茂野海人がトライをあげるなど、大観衆を沸かせたが、チャンスでトライを獲りきれず、スコットランドFWの力強いスクラムで反則を犯し、SOグレイグ・レイドローの正確なプレースキックで逆転負けを喫した。
 開始19分。スコットランドの左オープン攻撃、38歳のLO大野均のほとんど永遠不滅のひたむきな献身、右WTBマレ・サウの強く落ち着いた防御で、自陣右最深部近く、胸にアザミの14番、ショーン・マイトランドをタッチの外へ押し出した。大野が少し足を痛めて、やや遅れて自軍投入のラインアウトに加わった。このわずかな「間」がよかった。なんとなくディフェンス側の集中力がそがれる。そこで投入、サインプレーで攻めた。SO田村優ーCTB立川理道のおなじみのループから15番の松田力也が大きくゲイン、ラック形成後に右へ。HOという概念を超える総合的フットボーラー堀江翔太が絶妙のパスを送る。その先にナンバー8アマナキ・レレィ・マフィが待っていた。岩を砕く当たりトラン、吸い付くように7FL金正奎がサポート、裏へ抜け、内へ返し、元気者のSH、茂野海人がポスト下へ躍り込んだ。観衆が「34073」にまで伸びた味の素スタジアムは揺れた。見事な仕掛けと仕留めだった。「外側の選手がしっかりと声を出してくれていたのでトライまでつながった。スペースのあるところを共有できていました。」(立川)
 なのに負けた。高い湿度で苦しいはずのスコットランドは、終盤の重要な時間帯、先のジャパンのトライ、すなわち複数の細かなハンドリングを含んだ胸のすく突破とは対照的な得点をものにした。
 後半35分。16‐18。ジャパンが2点を追う。スコットランドは自陣奥のスクラムを得た。組み直し。個々で当代屈指のFBスチュアート・ホッグが前方へ駆け寄り、途中出場の頭脳、SHグレイグ・レイドローの耳元で何事かをささやいた。直後、スクラムから右へ供給、そのホッグが受けて、タッチの外でもパイパントでもなく、まっすぐ長大なキックを蹴り込んだ。最後尾の松田が後方にそらす。何とか再確保、思い切ってカウンター攻撃を仕掛けると、濃紺のジャージィのチェイスはすきなく迫っていた。ノットリリースのP。勿論、レイドローは決めた。
 ジャパンは後半25分前後に攻め疲れした。抜てき組の若いFBはきっと脚に軽度のトラブルを抱えている(直後に退くことになる)。スコットランドの主軸は状況を冷静に見きわめ、速やかにコミュニケーションを発動、最良の選択をした。伝統国の凄み、テストマッチの深さだ。「勝てばハッピーと思っている。」随行記者団からノートライの辛勝について聞かれると、ヴァーン・コッターHCはそう返した。
 胸に桜の赤白ジャージィは、息の上がる終了数分前、はるか後方へ戻されて、なお群れをなして躍動していなくてはならない。仮におのおの個が走れたとしてもチームのスタミナは別の次元にある。元気なうちはラックを素早く見切って防御の線を保てる。へばってくると眼前のファイトについ誘われてしまう。それが攻撃の陣形整備の遅れを招いた。
 初戦と同じく反則多発も課題だった。イタリアのマリウス・ミトレア主審は「17P(及び1FK)」を科した。スコットランドは「7P(1FK)」にとどまった。堀江主将は「クロスゲームでのディシプリンがいかに大切か」と語り、若手を念頭に「こういう試合でわかる」と説明した。(ラグビーマガジン2016年9月号より抜粋)