解題・説明
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大泉寺(だいせんじ)観音堂御本尊(秘仏)の前立観音像であり、頭上に11面を戴く四十二臂(しじゅうにひ)の千手観音像(像高56.2cm)である。11面は髻頂(けいちょう)の仏面のほか、地髪(じがみ)上に髻(もとどり)をめぐって10面を配し、正面の3面は菩薩面、左3面が牙上出(げじょうしゅつ)面、右3面は上歯をあらわし、牙を下出させる瞋怒(しんぬ)面で、後側の大笑(だいしょう)面は亡失している。合せ型による鋳造で、頭・体幹部は、頂上仏面(ちょうじょうぶつめん)と両腰脇部を含めて鋳造(内部は空洞)し、頭・体幹部、両脚部とも、銅厚は均一で極めて薄く(3~5mm厚)、かなり高度の鋳造技術がうかがえる。概して保存は良好で、面部や背面には鍍金(ときん)もよく残っているのを認めることができる。面貌秀麗(めんぼうしゅうれい)で、全体の比例も整い、衣文(えもん)も簡にして要を得ていて、鎌倉時代半ば頃まで遡(さかのぼ)る金銅仏中の優れた遺品である。
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