解題・説明
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多多神社は、大同元年(806)の創立と伝えられるが、現在の本殿は棟札(むねふだ)によって永正16年(1519)に建てられたことが明らかである。流造(ながれづくり)の小さな社殿で、覆屋(おおいや)で保護されてきたため建立当時の姿が完全に残されている。身舎(しんしゃ)の間口は1.7m、奥行は1.06mで、正面と側面に縁と高欄(こうらん)を廻らしている。大面(おおめん)取りの向拝(こうはい)柱に頭貫(かしらぬき)を通し、三斗(みつど)を用いて桁をうけ、向拝柱との繋ぎには海老虹梁(えびこうりょう)をかけ、棰(たるき)は二軒(ふたのき)、身舎の正面と向拝の斗栱(ときょう)間には彫刻蟇股(かえるまた)を用い、妻には虹梁大瓶束(たいへいづか)に笈(おい)形をかけ、柱上部の頭貫や繋虹梁の先端には彫刻木鼻(きばな)を施している。流造の正統を踏む室町時代中期の優れた社殿であるが、部分的に鎌倉時代の古調が残り、宝珠(ほうじゅ)や木鼻彫刻に地方色が窺われる点も注目される。平成19年中越沖地震で被災したが、修復された。
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