解題・説明
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儒教経典の注釈書『五経正義』は、唐代(618~907)の初め、孔穎達(くようだつ)・顔師古(がんしこ)らが勅命を奉じて編纂したものだが、その中の、中国最古の歌謡集『詩経』(しきょう)についての、孔穎達(574~648)ひとりの注釈(単疏)(たんそ)を記したのがこの断簡である。1997年の文化庁の調査によって、重要文化財に指定されている京都市蔵の「毛詩正義単疏本秦風断簡」と同一書のものであることがほぼ明らかになった。当時はまだ印刷の技術がなく、筆写されたものである。紙は黄蘗染め、紙質としても唐代の趣を伝える。(中森健二: 高知大学元人文学部教授)
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