このように、拝領屋敷は幕府より与えられたものであったが、召し上げや移転(替地)の命が下ったときは、速やかに従って幕府へ返上しなければならなかった。また無償で下賜されたものなので、当然売買は禁止であった。
旗本・御家人は新たな屋敷地が必要となった場合、拝領を幕府に願い出て許可を得たのち、自ら場所を見立てて、拝領武家屋敷の実務を管掌する普請奉行役所に出願して吟味を受け、これが済むと旗本の場合は結果が若年寄に上申されて、そしてようやく屋敷地を受け取ることができた。しかし一八世紀半ばになると、もはや新規に開発される土地も限界に達して武家屋敷地が不足するようになり、幕府より拝領の許可を受けたにも関わらず、屋敷地が見つからず入手できないという現象が多く起こるようになった(宮崎 一九九二)。