東京市全域における町内会との比較にみる港区域の町内会

42 ~ 44 / 405ページ
 次に戦間期の港区域における地域住民組織について、とくにこの時期に設立が相次ぐ町内会(町会)に即して検討したい。東京市内における町内会とは、市内各区の一つの町を区域としてそこに居住する一戸を構える世帯主を会員とする「自治的交隣団体」で、町内居住者の親睦と町内に関係する行政の補助業務を行う組織とされる(東京市編 一九二七)。町内会組織化の契機としては、しばしば大正一二年(一九二三)の関東大震災の影響が挙げられる。この点を昭和九年(一九三四)の調査に即してみると、表3―2―3―1のように大正一二年以降に設立された団体は、東京市一五区全体では九八六団体中五三四団体(五四・二パーセント)、芝区では一四〇団体中八〇団体(五七・一パーセント)で、むしろ半数弱が震災以前に既に設立されていたことがわかる。震災以前に設立された事例では、明治期の衛生組合に起源をもつ団体や氏子団体から転じたものが多かった。他方で麻布区では五九団体中四〇団体(六七・八パーセント)、赤坂区では四二団体中三一団体(七三・八パーセント)が震災後に設立された町内会であった。
 町内会の規模については、表3―2―3―2のようにいずれの地域でも一〇一人から三〇〇人からなる団体が多いが、芝区では一〇〇人以下の町内会も全体の四〇パーセント弱確認できる点が特徴的である。
 町内会が実施する事業について昭和九年の調査資料に即してみると、表3―2―3―3のように、衛生に関する事業を行っている町内会が最も多く、次いで慶弔、祭事、夜警などの地域の親睦や保安に関する事業、出征や凱旋、入退営などの兵事に関する事業を担っていた。なお昭和二年に東京市内の一四三町会に対して実施されたサンプル調査では、町内に町会は存在するが衛生組合は存在しない事例が一四三団体中一三二団体で、町会のなかに衛生組合を組み込んでいる事例が七団体、町会と別に衛生組合を置いている事例は四団体(東京市編 一九二七)と、戦間期までにほとんどの衛生組合が姿を消し、その事業が町内会に引き継がれていたことがわかる。
 

表3―2―3―1 町内会設立年次
東京市編『東京市町内会の調査』(1934)をもとに作成

表3―2―3―2 会員数からみた町内会数(昭和8年〈1933〉)
東京市編『東京市町内会の調査』(1934)をもとに作成

表3―2―3―3 町内会の事務
東京市編『東京市町内会の調査』(1934)をもとに作成