1 | |||
天保七丙申年 2 | |||
歯固(1)の箸をとり上て | |||
元日や木番のついたる膳まハり | 多少庵 | 鬼吉 | |
約束の菜汁といふや梅の宿 | おなしく | ||
組題徒然草の言葉 おもや さも有ぬへき 賑ひ 3 | |||
いつしかも あなとふとや 遠きからい | |||
あからめもせす | |||
掃初やおも屋のうちハ手くらかり | 言二 | ||
世もしつか(2)さもありぬへき玉の春 | 可笑 | ||
はつからす其にきワひもよろこはし | 秀鹿 | ||
いつしかもはつ日の笑ミを盈しけり(3) | 文戯 | ||
あなとふとやのほるはつ日のゆへなりと | 助耕 | ||
輪かさりに遠きからいの届きけり | 笑草 | ||
あからめもせすに今年へむけし顔 | 豊兆 | ||
同 人にしられし さし出たらん 中にましりて 4 | |||
覚束ならす 賤か なをおかしき すミたる | |||
けふまてハ人にしられし福寿草 | 栄松 | ||
日の岡にさし出たらんはつ日影 | 志張 | ||
袴きる中にましりてはつ化粧 | 左明 | ||
新参のおほつかならす屠蘇の酌 | 和水 | ||
門松やみやこも賤か伏家にも | 青水 | ||
才蔵の尚おかしさや国言葉 | 竹山 | ||
すみたつ空を告るや初からす | 梅年 | ||
同 木の間の ふかき山 暁ちかく 心ふかう | |||
あるや 千里の外も いかにそや | |||
朝拝や木の間はるかに鶴の聲 | 八水 | ||
ふかき山も隣のありて御慶哉 | 青瓜 | ||
かかへれハ暁ちかくはつや聲 | 亀白 | ||
心ふかく拝三度けつ初日の出 | 竹賀 | ||
梅等と並んてあるや福寿草 | 和調 | ||
御降や千里の外も同しほと | 岑松 | ||
咲そめる日をいかにそや福寿草 | 徐柳 | ||
同 花ハさかり いさまし かの枝 見る物かハ 5 | |||
あたなる 舞 月ハくまなく | |||
はつ春に心の花ハさかりかな | 守口 | ||
元日や前の車のいさましき | 寿三 | ||
かの枝もこの枝も梅の初日哉 | 鳳二 | ||
はつ空に見せる物かハ不二の山 | 里風 | ||
御小姓のあたなるよりや着そ初(4) | 斗白 | ||
日の出より空の簾(5)や鶴の舞 | 志水 | ||
福藁にくまなき月の宮居哉 | 川風 | ||
同 おこりを とめるハ もろこし かしこき | |||
此頃 いてや しりそけ | |||
春たつや民も奢て米の飯 | 雨蘭 | ||
蓬莱や外にとめるハ小盃 | 松山 | ||
あなとふとこま(6)もろこし(7)も初日哉 | 徐竹 | ||
はつ日さす梅にかしこき叟哉 | 柳二 | ||
此ころの人ニハ見へす門礼者 | 路丈 | ||
袴きていてや三十路を花の春 | 松溪 | ||
騎初(8)に餘寒(9)退け諸手綱 | 紫山 | ||
同 おもしろく やさしく 立出れハ 此世に 6 | |||
しワさも ねかハしかる ものなれ | |||
なに見てもミなおもしろし今朝の春 | 松長 | ||
三夫婦の優しき顔や屠蘇の酔 | 吟松 | ||
目出たいと門立出れハはつ霞 | 井蛙 | ||
此世にも天の岩戸やくら開(10) | 花松 | ||
ワか菜摘しワさも春の景色哉 | 奇石 | ||
初夢にねかハしかるやはつ茄子(11) | 寿松 | ||
はつ春に寿(12)き物なれ福寿草 | 桧甫 | ||
同 やう/\ けしきたつ ほとこそ | |||
あれ 世ハ 人に まかす | |||
やう/\と旭をまつのかさりかな | 松月 | ||
元日やかハらぬ御代の門つゝき | 蘿丈 | ||
風のたつ日ハなかりけり三日の朝 | 暁鳥 | ||
ゆたかさやほとこそよけれ屠蘇の酔 | 龍泉 | ||
あれこれとゆうまに登しはつ日哉 | 登鷹 | ||
若かへる世となりにけり花の春 | 柏斉 | ||
人にやる接穂の梅や恵方棚 | 語人 | ||
身の上ハ花に任せるはつ日かな | 青峨 | ||
同 あな浦山し 目を悦ハし あらまほし 7 | |||
たへすして 類なし 筆をとれハ かわる | |||
あなうら山し海原のはつ日の出 | 斗牛 | ||
老も目を悦はしけり福寿草 | 風子 | ||
斯くあらまほし元日の人心 | 塘旭 | ||
屠蘇吸つ猶悦ひにたへすして | 池塘 | ||
寝心はまた類なしはつ小雨 | 芦根 | ||
今朝筆をとれハ開きつ福寿草 | 一坡 | ||
元日や矢立(13)にかわるさし扇 | 星花 | ||
遠山ハ斑に雪や若菜摘 | 永嘉亭 | 波憲 | |
梅咲や朝/\鳥のきて起す 8 | 若小玉 | 竹久 | |
梅見から道のつきけり哥こころ | ノホリ戸 | 松月 | |
狩きぬ(14)へ風をすへらす柳かな 9 | カサ原 | 栄松 | |
行あたる人のやさしき華見かな | 同 | 和水 | |
鶴にのる工夫はなし歟春の山 10 | 川ツラ | 左明 | |
小社も掃除のとして椿かな | キ西 | 八水 | |
摘からる若菜の中のワかなかな 11 | 青瓜 | ||
梅咲て入江ハ水となりにけり | 大サハ | 子朗 | |
桍着てひろふて居るや蕗の薹 12 | 同 | 竹万 | |
釣あけてほうり込たる蛙かな | 同 | 抱月 | |
そこにある山もけふるや春の雨 13 | 同 | 氷佳 | |
日かさせハ蛙になりぬ草の種 | 羽ニウ | 青圃 | |
縄はりの人足霞む海手かな 14 | キヨク | 岑松 | |
春雨や香煙しめて眠けさす | 大桒 | 竹賀 | |
大徳寺とりまへて居るすみれ哉 15 | キ西 | 亀白 | |
うくひすか篭鴬を古うせし | フトウカ | 笑草 | |
のとけしや小魚の濁す溜りみそ 16 | シヲン寺 | 如琢 | |
杖たけヲ調度伸けり梅の枝 | 長ミヤ | 如繍 | |
しふつたき眼(15)に愛相や庭さくら 17 | カモウ | 拍斉 | |
網をすて手元へ垂るゝ柳かな | ツハキ | 鳳二 | |
うつかりと深入したり春の山 18 | セイチ | 松渓 | |
かた枝を月ヲ捧て花の兄 | スカ | 寿石 | |
帰る雁名残ハ雨になりにけり 19 | カス | 虎〓 | |
鴬に嚏(16)ハこ袖に包みけり | 同 | 春重 | |
二ヘんめに鴬の顔見知かな 20 | ミツ又 | 泰門 | |
鴬ややぶは隣のものながら | 同 | 里風 | |
一雨にはらりと芽張る柳かな 21 | 〓遊 | ||
此ころの山は月夜とさくらかな | キヨク | 周虹 | |
人の気とともに伸たる春日かな 22 | ツハキ | 寿三 | |
松の戸や錺の脇のかけ干菜 | 宝シュ花 | 斗牛 | |
墨ふくみかねつ餘寒の筆の先 23 | 同 | 塘旭 | |
たてる茶の器に匂ひあり梅の花 | 同 | 池塘 | |
鮒うりのもて来てくれし薺かな 24 | 同 | 芦根 | |
おのが弾琴さへねむし春の雨 | 同 | 一坡 | |
やふかけや梅は見へねと楳かほる 25 | 同 | 星花 | |
気分よき隅田の堤や春の風 | スキ戸 | 雲二 | |
菜の花やとても咲くなら水の上 26 | 行田 | 守墨 | |
同 | |||
福寿草ひらいて咲か上手なり | 羽生 | 見二 | |
□あけてのきは明たつ雉子哉 | 可石 | ||
同 | |||
梅咲て水のうこきのはしまりぬ | ワカ小玉 | 寛之 | |
同 | |||
きれ凧や〓(17)名流して橋の下 | テコ林 | 可笑 | |
道聞の絶る日もなし梅の宿 27 | 同 | 生水 | |
ひと鍬の土に寝て居蛙かな | 明クワン寺 | 助耕 | |
やぶ入や隣の家の起た聲 | 同 | 濱司 | |
春の山涼むこゝろに移す哉 | クシツクリ | うらゝ | |
泡雪やとけ残りたる不二の山 | カラト | 少年 楚水 | |
梅咲や一掉ふえし渡し舟 | 同 | 亀並 | |
冨士見ゆる里の人気や楳の花 | カサ原 | 忘張 | |
朝靄の〓口やうめの華 | カミヤ | 楓堂 | |
しら魚や雲にうつりて夜のしらむ | カフノス | 和谷 | |
春風や松に香のある清見寺 | ライ羽 | 友之 | |
うくひすの我もの顔や藪屋敷 | ミツ又 | 仙造 | |
山/\の曇を春の緑かな | カス | □□ | |
若菜つむ賤か袂に霜白し | 同 | 松川 | |
はつ夢や宝つくしの帆かけ船 | 同 | 海笑 | |
干海苔の簣(18)を離れけり春の風 | 同 | 喜月 | |
赤/\と松へ初日の昇りけり 28 | 西ノ谷 | 玉芝 | |
松の花散や水なき車井戸 | 同 | ||
手紙にハ春を封して年の暮 | 同 | ||
盃に匂ひ汲けり庭の梅 | カノムロ | 志水 | |
舞雲雀付鬢□て戻りけり | シヲン寺 | 仙里 | |
ふき勿や遊ふ事にも草朴子(19) | トクリキ | 吾楽 | |
同 | |||
春の野やとの草摘も馬の頃 | カミ扇會頭 | 楽糸 | |
手に/\に桜もて来る禿(20)かな | ツハキ | 康年 | |
家あたりはかり残して霞かな | 同 | 斗白 | |
鴬にとわれて咲や藪の梅 | 同 | 淇水 | |
よしあしの名こそ見へされ春の草 29 | スキト連會頭 | 素水 | |
仙境もこや日くらしの弥生頃 | 小〓 | ||
うたゝ寝を覚す胡蝶の羽風哉 | 鋤月 | ||
鴬に呼かけられし朝寝かな | 英枝 | ||
ものの香や眼さめて蝶のニッ三ッ | 竹雨 | ||
春風やつい手拭の盲女も来る | 草鳥 | ||
梢から日の延て行く柳かな | 米子 | ||
海の面や静に春をうちはする | 松雨 | ||
雨の日は出無の正月こころかな | 會頭 | 東䲧 | |
ぬるむかと水かき迴す柳かな | セイ地 | 花松 | |
同 | |||
〓(21)に青みくつつく若菜かな | 中シマ連會頭 | 井蛙 | |
あかつきをつくる梺のつくしかな | 青水 | ||
玉川の〓葉の中やはつ蛙 | 竹山 | ||
暖やよしのの奥はからふかき | 奇石 | ||
玉川のさらし染たつ霞哉 | 喬山 | ||
菊の苗子枝孫枝分根かな 30 | カスカヘ連會頭 | 蒼吾 | |
春雨やおもく覚し夜の衣 | 曲江 | ||
梅からや盛ならべたる柿作り | 里屋 | ||
家かけや無事な色なる赤椿 | 寒雨 | ||
楳さくやすこしハ東風のあるもよし | 雨丈 | ||
鴬や手入のすみし槇の庭 | 雨十 | ||
さく梅にちる梅あるやかけ日向 | 巴雪 | ||
暖かくなりし庵やうめの花 | 寿松 | ||
やさしくハ啼ない雉子の生哉 | 柳交 | ||
舟湯出て柳とゝもに吹れけり | 如川 | ||
橋守の聟貰ふ夜やなく蛙 31 | 竹塢 | ||
寛楽/\と(22)山ハ笑ふに不二白し | 渭南 | ||
佐保姫やおり/\絶る斧の音 | 実岡 | 風子 | |
雨風の度に春めくやなきかな | カモフ | 青峨 | |
あら磯も静けき春の日かけかな | 同 | 語人 | |
馬つなく木はなかりけり花の山 | ノホリト連 | 蘿丈 | |
石にも花の咲かゝる弥生哉 | 暁烏 | ||
梅かかに朝寝の恵を覗かれし | 龍泉 | ||
常盤木の色に移るや春の山 | 登鷹 | ||
同 | |||
霞けり晴けり田子の浦小舟 | モンマ連會頭 | 雨蘭 | |
雨脚について出けりはつ蛙 | 柳二 | ||
踏込て見れハ處は春の草 | 寿松 | ||
摘草のうしろに咲し菫かな 32 | 松山 | ||
鴬の一聲啼てあさ日和 | 徐行 | ||
梅さくや蝶を見初る雨の翌 | 路丈 | ||
みよし野ハまき葉のことし梅の花 | 松長 | ||
暖に流れのますや春の水 | 吟松 | ||
ちつとして居るハまれ也蝶二つ | 柳翠 | ||
遠藪も鼻の先也罧の華 | 青山 | ||
野遊や拾ふてもとる鹿の角 | 梅枝 | ||
鴬に嚏こらへて庵のぬし | 花交 | ||
大空や春の来ている庵の庭 | 呉竹女 | ||
窓あけてつい転寝やおほろ月 | 常女 | ||
うくひすやうえにとられし琴の曲 | 連女 | ||
菜の花やきのふに遠き朝筑波 | 松石 | ||
春景 十二支 | |||
青柳のなかるゝ水に似たりけり | 香臨斉 | 古行 | |
鴬や葩(23)踏た素忽(24)ふり | 止水軒 | 巴曲 | |
万歳とまんさい通りすかへけり 33 | 蘿窗 | 葛山 | |
雲雀なくやしらけて残る月の上 | 春暁庵 | 裳切 | |
春の日や何を見やうと好な事 | 長短居 | 言二 | |
田の雁のゆくとしから二日ほと | 穂並庵 | 豊兆 | |
鴬やたまつて人をやり過し | 東暁庵 | 紫山 | |
おまけにや若菜ほとけハ古松葉 | 霞月庵 | 徐柳 | |
たいらかな海や日永の汐くもり | 茂竹庵 | 秀鹿 | |
うくひすや耳峙(25)て鳥をきく | 翫月窓 | 文戯 | |
東都春色 | |||
伽羅(26)の香を梅に添けり小鋸 | 可立 | ||
鴬やつい水にさし盥の湯 | 東水 | ||
帰る雁うめ霞むまて見送りつ | 二石 | ||
百姓の重へるなり菜種頃 | 梅守 | ||
梅ちるやほして置たる鍋の尻 | 桂女 | ||
鴬の外ハ聲なき築地かな | 溪雅 | ||
潔よし初荷車の〓(27)るおと | 松牡 | ||
柳見に小雨見にとて隅田川 34 | 閖月 | ||
同 | |||
日の伸を爺も知けり索の尺 | 杦縞舎 | 素月 | |
降過てなかれやミけり春の雪 | 秋香庵 | 月貨 | |
同 | |||
かくれ家や蛙も聞てよいところ | 宝雪庵 | 蘭山 | |
同 | |||
賣そめやとほしてわたす足袋のひも | 鳩来庵 | 風谷 | |
うくひすや花らしき朝の内 | 魚楽 | ||
猫の恋(28)猿は飼れておろかなり | 梅夕 | ||
遠く見るものに長閑の居りけり | 蘭鯉 | ||
あつかいや雲雀舞日の灰たハら | 大澪 | ||
木々の香や磯のにほひや春の鐘 | 其父 | ||
のどかなり松へ来る鳥戻る鳥 | 雨谷 | ||
木すへから水汲みあける柳哉 | 庵裡 | 和月 | |
ここといふ花の符合にふた所 35 | 六草庵 | よろつ | |
濱風は霞のうらかなりにけり | 木之 | ||
面彫の眼をえりかゝる日永哉 | 麦丸 | ||
花明り冬木の闇にワかれけり | 雪湖子 | ||
洪水を防し杭もめてにけり | 瓢長 | ||
肝煎の馬をたつねる日水かな | 乙人 | ||
初草や空にかくれて雨の降る | 照桂 | ||
あらためてことしへ向ぬ都鳥 | 米器 | ||
世のさまに似たり蕨の長み哉 | 仙路 | ||
同 | |||
しら魚の網にしみつゝ哀かな | 風篁庵 | 鳳儀 | |
知音の道々□る花見かな | 養老庵 | 秀枝 | |
杖ついゐて今朝はつ草と申けり | 裡左庵 | 三千州 | |
春風やみな当寺らしい塵の穴 | 平福庵 | 李水 | |
同 | |||
夢まてハ今かた来たり春の水 | 無為庵 | 〓五 | |
同 | |||
菜畠は常盤の色をゆき間哉 36 | 如瓶庵 | 守口 | |
鳥の聲の日に/\高き二月かな | 月下庵 | 川風 | |
鴬やうらみ聞て枝うつり | 蘿月庵 | 濱雨 | |
鴬やけふ畳屋も来てくれた | 双鶴亭 | 〓呂 | |
ゆく先や出て来るよふな春の風 | 佻仙堂 | 静河 | |
同 | |||
うららかや蛸の〓たる海の上 | 杦事 | 梅年 | |
御手洗へころかり込し手まり哉 | 松圃 | ||
歳暮題行年 37 | |||
行としの波に〓のかたからふね | 守口 | ||
ゆくとしの名残を酒に忘れけり | 寿三 | ||
行年を見に出る人や角田川 | 鳳二 | ||
ゆくとしに酒のくるま座おしミけり | 斗白 | ||
むく鳥の群ゆくとしの浪間かな | 斗牛 | ||
ゆく年の入江に一帆ふた帆哉 | 風子 | ||
行年や〆縊たるかねのかす | 塘旭 | ||
ゆくとしや餅搗おとのにし東 | 池塘 | ||
行年をしらて過るや松の聲 | 芦根 | ||
ゆくとしや塵は□ふすくさき | 一坡 | ||
行年の市に笑ひつ福の面 | 星花 | ||
ゆくとしや足して事足山の家 | 竹賀 | ||
行年や来て入り戻る福祷懸 | 岑松 | ||
ゆくとしの行衛ハ豆かしらせけり | 松月 | ||
ゆく年や恵方を捜す暇もなし | 蘿丈 | ||
行年の樽をまくらにワすれけり 38 | 龍泉 | ||
ゆくとしの旨ミ忘れぬ福茶哉 | 登鷹 | ||
ゆくとしの筆に氷はなかりけり | 暁烏 | ||
行年のゆたかなりけり市の人 | 拍斉 | ||
ゆく年やまた来るとしの大仕懸 | 語人 | ||
世ハいろ/\としを追ふ人おしむ人 | 青峨 | ||
ゆくとしもおなし音なり水車 | 川風 | ||
同 おか見(29) 39 | |||
松風の音にあやかる岡見哉 | ハ水 | ||
おもしろき我か家の形も岡見哉 | 青瓜 | ||
鳶に物いふても見たるおか見哉 | 亀白 | ||
塞翁か馬とおもへとおかみかな | 栄松 | ||
神/\の是もおしへか岡見より | 志張 | ||
蓑背負た形におハるゝ岡見かな | 和水 | ||
おかしさも嫁に泣れておか見かな | 左明 | ||
まなこより足のつかなし岡見かな | 言二 | ||
松はかりうえの濁しぬおか見哉 | 可笑 | ||
入相の跡から光るおかみかな | 秀鹿 | ||
ゆくとしやおか見に□いるかをとなし | 文戯 | ||
来年ハ何もかもよき岡見かな | 助耕 | ||
松一木是も岡見の目あてかな | 笑草 | ||
伐守のつるもおか見の炊かな | 豊兆 | ||
同 年仕舞 | |||
□□なくとつさり砕て年仕舞 40 | 雨蘭 | ||
帋衣まて畳てとしを仕舞けり | 井蛙 | ||
としハもう餅を吹せて仕舞けり | 奇石 | ||
酒の直に手をうつ音や年仕舞 | 仟山 | ||
親に身を任せて年のしまいかな | 青水 | ||
大船もとしの湊に仕舞かな | 柳二 | ||
とし仕舞して分別の春となり | 松圃 | ||
才蔵も旅の丁度やとし仕舞 | 松山 | ||
沢山に雪もつもりて年仕舞 | 寿松 | ||
春へ手をかけて登るや年の坂 | 松渓 | ||
かた落つる松や師走の市戻り | 花松 | ||
とし仕舞財布の皺の伸にけり | 松長 | ||
箒目の八重にあたるや年しまい | 吟松 | ||
今宵から恵方おもふや年仕舞 | 路丈 | ||
一かさね小袖□ふてとし仕まい | 徐竹 | ||
ひき満て茶臼に住れや年仕舞 | 梅年 | ||
風流の種おろしけり年仕舞 41 | 徐柳 | ||
雪降に枯色ハなし年仕舞 | 紫山 | ||
鴬に燈し見せけりとしのうち | 多少庵 |
1 | はがため |
2 | 静か |
3 | みたしけり |
4 | きそはじめ 着衣始とも書き、江戸時代に正月になって、新衣を着始める儀式のこと |
5 | すだれ |
6 | 高麗 現在の朝鮮半島のこと |
7 | 唐土 現在の中国大陸のこと |
8 | 新年にはじめて馬に乗る儀式 |
9 | よかん |
10 | くらびらき 新年に吉日を選んで、その年はじめて蔵を開くことで、多くは一月十一日に行われた |
11 | なすび |
12 | めでた |
13 | やたて 墨壺に筆を入れる筒のついたもので、主に旅先で書くために携行する |
14 | かりぎぬ |
15 | まなこ |
16 | くさめ くしゃみ |
17 | 浮 |
18 | す |
19 | くさぼうこ |
20 | かむろ |
21 | したくつ |
22 | からからと |
23 | はなびら |
24 | そこつ |
25 | そばだてて |
26 | きゃら |
27 | きしる |
28 | ねこのこい 早春猫にさかりのつくことをいい、春の猫も同じ意味 |
29 | おかみ 大晦日の夜に、蓑をさかさに着て岡に上り、自分の家の方を望んで来年の吉凶を占うこと |