解題・説明
|
【判型】大本2巻1冊。 【作者】不明。 【年代等】江戸前期(貞享頃)刊。刊行者不明。 【概要】分類「往来物(地理科)」。異称『〈仲安〉事物往来』。大本2巻2冊、後、2巻合1冊。上巻は「新春之慶賀不可有尽期候…」、下巻は「先、名茂高難波之梅、片葉之芦、鵜殿之芦…」で始まるが、上下巻合わせて1通の手紙文形式で大坂の地理・風俗等を記す。上巻では、大坂の年中行事・縁日・遊興の景物・男女の風俗等を述べ、大消費都市、信仰の盛んな土地、享楽の巷としての大坂を描く。下巻では、大坂ならびに周辺地域における生産物資・商取引物資そして消費物資について述べるが、多くの類別語彙集団(被服34語、食品・食物239語、家財・家具・雑具63語、薬種・香料101語、燃料5語、生産道具13語、植物66語、動物41語、嗜好品1語、武具5語、その他4語、諸職・諸商・諸芸のもの42語、語彙合計614語)を列挙する。食品・食物、家財・家具・雑具ならびに薬種・香料に関わる分野の語彙が豊富な一方で、武具関連の語彙が乏しく、大坂町人の営む産業や生活の実情に即した内容になっている。首題には『大坂往来』とあるが、『貞享2年(1685)書目』に見える『大坂名所往来』に該当するものとも考えられる。なお、享保(1716~35)頃刊『〈仲安〉事物往来』は本書の首題を削除した改刻本である。また、本書に大幅な増補を加えた『〈絵入文章〉大坂往来』が嘉永元年(1848)に刊行された。 【備考】上巻末尾(半丁)を補写で補う。(小泉吉永 記)
|