解題・説明
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【判型】大本1冊。 【作者】不明。 【年代等】貞享2年(1685)以前刊。刊行者不明。 【概要】分類「往来物(地理科)」。異称『江戸名所往来』。大本2巻2冊。首題に『名所往来』とあるが、内容から『貞享2年書目』に載る『江戸名所往来』と推定される。「青春之吉兆幸甚々々。千富万徳珍重々々。自他繁栄雖事旧候、猶以、不可有尽期候…」で始まり、「…見物之僧俗荷破籠、懐小竹筒、返裾、連袂、遖静謐之験歟」と結ぶ1通の新年状風の文章で、(1)江戸城内を中心とする年中行事、(2)大田道灌が長禄年中(1457~1460)にこの地に城を築いてからの歴史、(3)千代田城とその城下、(4)主要な橋梁、東叡山・不忍池・湯島天神始め江戸市中の名所旧跡・神社仏閣等の縁起・景趣、これらに群集・遊楽する市民の様子などにも触れる。本往来は冒頭の一部を欠くが、江戸を対象とした寛文9年(1669)刊『江戸往来(自遣往来)』に続く地誌型往来として重要な位置を占める。また、『江戸往来』のように諸国から流入する諸物資に関する記事を欠く反面、名所旧跡・神社仏閣に関する記事が詳しく、後の『隅田川往来』など参詣型往来の先駆とみなすこともできる。 【備考】上記概要の「江戸城内を中心とする年中行事」のうち、1月~3月の部分を欠く。(小泉吉永 記)
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