解題・説明
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【判型】大本1冊。 【作者】堀流水軒(直陳)作・書。 【年代等】正徳4年(1714)3月刊。[大阪]吉文字屋市兵衛板。 【概要】分類「往来物(地理科)」。「泰平往来」「諸国(大日本国尽)」「官名」から成る手本。「泰平往来」は、まず「抑江府年頭之御規式、元日、二日、御一門之御方々、国主、城主之歴々、三献之御祝、其外、諸侯昵近之面々…」と筆を起こして、正月朔日、2日に将軍家一門、各国諸侯以下諸役人、続いて3日に諸大名の子息以下の新年挨拶を始め、5日寛永寺僧侶の挨拶、6日諸国寺社の挨拶、7日「七種之御粽」献上、11日御具足祝いを始めとする新年儀式のあらましと城中の模様を綴り、君主を「前代未聞の名君」と讚える。後半では、まさに「国家安全、理民長久の瑞相、泰平繁昌」の今日の江戸は、日本諸国のみならず中国・朝鮮・琉球・オランダなど近隣諸外国からも崇敬されることを述べた後、江戸府内、東西南北の地名と繁栄ぶりを紹介する。このように『泰平往来』は、寛文9年(1669)刊『江戸往来』に、後の文化2年(1805)刊『御江戸名物往来』や『(江戸)繁栄往来』の要素を加味した地理科往来といえよう。「国尽」は五畿内以下の諸国名、「官名」は「太政官・左大臣・右大臣…」から「…督・佐・尉・志」までの官名・官位を列挙する。(小泉吉永 記)
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