解題・説明
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【判型】大本1冊。 【作者】不明。 【年代等】寛永5年(1628)1月刊。刊行者不明。 【概要】分類「往来物(古往来)」。『庭訓往来』は作者不明、南北朝時代成立の武家子弟用に編まれた往来物で、中世から明治初年に至るまで後半に流布し、江戸時代の庶民教育で最も頻繁に用いられた往来物の1つ。現在までに確認されている古写本は約70種で、近世から近代初頭までの版本は約300種に及ぶ。ちなみに現存最古の至徳3年(1386)写本(巻子本2軸、島根県出雲市・神門寺蔵、重要文化財)は、行書体・1行約12字・無訓で記し、奥書に「至徳三年霜月三日、豊前守朝英書之」とある(朝英の経歴は未詳)。また、慶長11年板(国立国会図書館蔵)は、行書体・大字・6行(1行約12字)・無訓で記す。本文は毎月往返2通に単簡1通(7月状または8月状)を加えた計25通の書簡文で、主に武家の社会生活上の事柄を題材としており、新年の会、詩歌の会、地方大名の館造り、領国の繁栄、大名・高家の饗応、司法制度・訴訟手続、将軍家の威容、寺院における大法会、大斎の行事、病気の治療法、地方行政の制度等を主題とするが、それぞれの書簡文中にまとまった類語(衣食住370語、職分職業217語、仏教179語、武具75語、教養46語、文学16語、雑61語、計964語)を多く収録するのが特徴で、後続の古往来に影響を与えた。(小泉吉永 記)
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