解題・説明
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【判型】半紙本5巻5冊。 【作者】八文字自笑3世(八文字其笑2世・凌雲堂・安藤自笑・八文字屋八左衛門)作。八文字自笑2世(瑞笑・李秀・秋月下・白露)校。 【年代等】宝暦13年(1763)春序。宝暦13年1月初刊([京都]八文字屋八左衛門板)。江戸中期後印。[大阪]和泉屋卯兵衛板。 【概要】分類「浮世草子」。いわゆる京都書肆、八文字屋が出版した浮世草子「八文字屋本」の一種で、表題のように往来物『庭訓往来』の文言を随所に交えつつ記した気質物(特定の身分や職分に共通する性向や性癖を強調して描いた浮世草子)。序文に「玄恵法印の書記し給ひし『庭訓往来』の連綿の趣向を風流にとりなし、題号は固より古に随ひ春色堂(シバイ)発(ヒラケ)て已来(コノカタ)今に絶ぬ難陳(セリフ)、比老(タチヤク)、燕脂郎(オンナガタ)、?童(ワカシユガタ)のつめびらき[駆け引き]を五冊に組立、春の始の御なぐさみ、貴方にむかつて先ひろめ申さふらふ畢ぬ」とあり、『庭訓往来』の冒頭を模して序を結ぶ。1巻は序開「抑年の始より居続の大尽」、序ノ中「幸甚幸甚身請の相談」、序ノ切「いそぎ申べきしらせの血文」の3話。2巻は道行「思ひながら延引す母親の敵討」、二ノ中「奉公の忠勤なり百石の墨付」、二ノ切「不審千万の乞食の昔語」の3話。3巻は三ノ口「殆赤面に及ぶ於以津留(オイヅル)の所書」、三ノ中「異躰の形を以て家老の忠臣」、三ノ切前「難黙止(モダシガタキ)は兄弟の符合」の3話。4巻は三ノ結「已無所遁(スデニノガルルトコロナシ)浪人の切腹」、三重「中絶良久(ヤヤヒサ)し親子の名乗」、四ノ口「雲の如く霞に似たり神崎の誹徊」の3話。5巻は四ノ中「毛を吹て疵を求む目印の腰刀」、四ノ切「堅凍早とけし善悪の如何如何(ナゾナゾ)」、五段目「薄霞忽にひらく武門の繁昌」の3話。 【備考】本書は往来物の趣向で綴った浮世草子で、往来物ではない。(小泉吉永 記)
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