解題・説明
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【判型】大本1冊。 【作者】鈴木惣右衛門作。西岡房順書。 【年代等】天明6年(1786)4月作。天保6年(1835)6月書。 【概要】分類「往来物(地理科)」。冒頭の第1状が「新歳之嘉祥、千里同風、雖事旧候…」で始まり「…恐惶謹言 孟春十五日」で終わるように、12カ月の往復文、すなわち長短24通の消息文形式で、松山の地理・歴史・産業・文化・風俗等について記した往来。第1状は城中新年儀式(元日)のあらまし、第2状は正月3日以降の新年諸行事、第3状は息子の手習手本の依頼、第4状は2月以降の諸行事・祝膳、第5状は領内遊覧の勧めと領内の紹介で、以下、領内各地の名所旧跡・名物・歴史・故実・年中行事・風俗・学問・文化・産業・諸職などを織り交ぜながら詳しく述べ、最後の第23・24状で領内の郡名・村名を列挙する。地誌型往来として記述の詳細さや内容の豊富さは注目すべきであろう。また第3状では、世間には『庭訓往来』『江戸往来』『都往来』『風月往来』など種々の手習手本があるが当用でない内容も含まれるので、まずは遠きを求めず手近な事柄を学ばせたいという作者の往来観も垣間見られ興味深い。天保6年写本(三次本)は本文を小字・11行・付訓で記す。 【備考】本書は書道手本というよりも手習師匠の手控えである。(小泉吉永 記)
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