解題・説明
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【判型】半紙本1冊。 【作者】笹山梅庵作。西川竜章堂(美暢)書。 【年代等】天保6年(1835)11月刊。[大阪]河内屋太助ほか板。 【概要】分類「往来物(教訓科)」。異称『寺子制誨式目』。笹山梅庵の寺子屋規則、いわゆる元禄8年(1695)刊『手習新式目(笹山梅庵寺子制誨式目)』の本文に、(1)「大やまと名所竪文(たつぶみ)」、(2)「都路名所竪文」、(3)「和歌名所竪文」の地理科往来3編を合冊した往来。巻頭の「寺子制誨式目」は元禄板と同内容で、「一、人と生れて物かゝざるはひとあらず。是を盲目に縦たり…」のように、無筆の恥を強調する第1条から始まる37カ条と後文から成る教訓で、寺子屋内での学習態度を始め、師・親・友人等との関わりにおける諸教訓にも説き及ぶ。後文では、以上の条々は単に記憶すればよいというものではなく、「心に哲(さと)し、身に守る」ことが大切なこと、片時も怠ることなく手習いの稽古に出精すべきことを諭す。後半の地理科往来のうち(1)は、「秋津渕(あきつす)の世も豊なる御代の春、花の都は平に…」と筆を起こし、五畿七道の順に多少の形容句を伴いながら各国の名称を列挙した往来。(2)は、一般に『東海道往来』『都路往来』と呼ばれる往来で、七五をひとまとまりとする短句の最初の音と最後の音がそれぞれ前後の句と連なる「文字鎖(もじぐさり)」形式で、東海道の宿駅を江戸から京都まで順々に書き記す。(3)は、『和歌浦名所文章』をわずかに改編した往来で、和歌浦の名所旧跡や寺社を一巡する紀行文風に紹介する。上記(1)~(3)はいずれも七五調の文章で、本文を大字・5行・付訓で記す。巻頭に「菅原道真座像」「太宰府天満宮図」(前二者色刷り)、本文中に「手習図」「席書図」「旅道中図」の三葉を掲げ、巻末に「御条目之写」として、「父母に孝行、法度を守り…」で始まる一文を付す。(小泉吉永 記)
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