解題・説明
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【判型】大本1冊。 【作者】伝一条兼良(一条禅師)作(確証はない)。 【年代等】室町中期作。江戸前期書か。 【概要】分類「往来物(古往来)」。古写本は大本2巻合1冊。江戸初期刊本は大本2巻2冊。室町時代中期、永享12年(1440)より寛正5年(1468)に至る25年間に作られたと推測される古往来で、南北朝時代に成立した『新札往来』に大幅な増補を加えたもの。上下両巻合わせて全1通の新年状形式をとり、その間に60条目(上巻25条、下巻35条)もの豊富な語彙集団、すなわち、神祇30語、仏教241語、漢学63語、文学100語、教養185語、人倫12語、職分職業38語、衣食住455語、武具64語、自然13語、その他75語の合計1276語を収録する。この語彙数は、室町後期『新撰類聚往来』に次いで多く、そのうち3分の1以上を占める455語が衣食住の生活関係語彙である点が注目される。 【備考】底本には、末尾の「于時長享三夏五月日書之訖」の記載をもって「足利時代の書写なり…」と記すが、底本のもとになった長享3年(1489)写本の存在を示すもので、底本の書写年代は近世初頭以降と思われる。ただし現存最古の古写本は大永2年(1522)写本(橋本公夏筆。内閣文庫蔵)である。古刊本では江戸前期の無刊年本(本館所蔵404-405)と寛文8年(1668)板の2系統がある。(小泉吉永 記)
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