解題・説明
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【判型】半紙本1冊。 【作者】不明。 【年代等】天保4年(1833)以前刊。[水戸]茗荷屋弥兵衛ほか板。 【概要】分類「往来物(社会科)」。異称『万歳婚礼往来』。「夫、婚礼之式法有増之分申入候訖。抑、男女新婚之事者、一代一度之大礼、諸事厳に可祝事なり…」と起筆して婚礼について要用の事柄を記した往来。冒頭に、婚姻の大切さや分限に応じた婚礼儀式について述べ、続いて「結納」「嫁入」「婚礼」「見参」の順に、身分の違いにも触れながら式礼・膳の次第などについて比較的詳しく説く。本文をやや小字・6行・付訓で記す。巻頭に婚礼(式三献)等の図、頭書に「祝言床餝之事」「歯黒之事」「文字の濫觴の事」「琴のはじめの事」「碁・双六初の事」「雛遊之由来」「貝合せの事」「機織之由来」「縫針之事」「五節句之由来」「七夕歌尽し」を掲げ、さらに、巻末に「万折かたの図」「文の封じやう」を載せる。ただし、この巻末記事を省いた改編本もある。 【備考】底本は口絵(婚礼図ほか)が多色刷りであるのが珍しく、初板初刷りに近いものと思われる。さらに、裏表紙に「天保四癸巳二月…」の書き入れがあるのは重要で、本書初刊年代のヒントになる(現状で天保4年以前刊とする根拠。小泉本は底本と同じで刊記の板元名のみを削除した異板があり、それには「天保十四年」の書き入れがある)。なお、本書の改編本は、第14丁表の本文最後の1行から「仍而概記畢…」以下を削除し、次頁以降の「万折かたの図」「文の封じやう」等の記事や刊記を全て削除したものである。また、この改編本には「〈天保新刻〉婚礼往来」の題簽を付したもの(小泉本、題簽から[江戸]和泉屋市兵衛板と判明)がある。(小泉吉永 記)
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