三次市立図書館所蔵「往来本」612点の中から、特に貴重な196点をデジタル化いたしました。
一般には「往来物」と呼ばれ平安後期から明治初期にかけて寺子屋等で用いられた教科書の総称です。往来とは最初、往復一対の手紙文をいくつも集めて編まれた形式に由来する名称でしたが、近世ではおよそ初等教科書として用いられるものをすべて往来物と呼ぶようになりました。※三次市立図書館では昭和37年の三次市重要文化財の登録に「往来本」とある為、今後も「往来本」と呼びます。
教育史はもとより、文化史、経済史、風俗史、地方史など広範囲な分野における貴重な資料と言えます。
三次市立図書館が所蔵する「往来本」は大阪在住の古書収集家の黒崎貞枝氏が大正末期頃より収集したものに由来します。そのコレクションは彼の没後、甥の平井右平氏の手に渡り、後に三次に図書館が設置されるきっかけとなりました。 平井右平氏は明治16年、京都に生まれ元京都高等工芸学校の染色助手、染色工場経営のかたわら古美術収集、俳諧や茶道を嗜む趣味人でした。 「往来本」が平井氏から三次市立図書館に渡った経緯は、以下のとおりです。
平井氏の望みは、往来本を三次町に寄贈することによる「図書館の設立」と「多くの研究者への活用」でした。 今回、三次市立図書館設立のきっかけともなった「往来本」をデジタル化し広く公開することで、今後の往来物研究へのさらなる活用を期待いたします。