解題・説明
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【判型】大本2巻1冊。 【作者】鈴鹿定親作。 【年代等】延宝2年(1674)7月書。延宝3年初刊。江戸中期再刊。[京都]武村嘉兵衛板。 【概要】分類「往来物(地理科)」。異称『洛陽往来』『京都往来』『帝都名所往来』『都名所古迹往来』。手紙文形式で、宮中を中心とした京都の年中行事、洛中洛外町次第、名所旧跡、宮寺・山院・寺号、所々額筆者、国八郡并村数、花洛祭礼等を詳述した往来。「陽春之慶賀珍重々々。富貴万福幸甚々々。自他繁昌雖事旧候、猶以不可有尽期候…」で始まる本文は、総じて寛文9年(1669)刊『江戸往来』に類似しており、末尾を「…二条御城内外御番之歴々、抽誠精、昼夜知時、太鼓・櫓鳥不驚、弓入袋、剱納筥御代…国土安穏民譲畔、誠武運長久。于時延宝二寅初秋、鈴鹿定親造之畢」と結ぶ。本文の所々で「洛中洛外町次第」の如き語彙集団を掲げるのも特色。現存本では延宝3年松会板が最古だが、松会板は先行する上方版の覆刻と考えられ、先行書の存在も否定できない。なお、本書を改編した寛政10年(1799)刊『〈童子重宝〉都名所往来』や、本書を増訂した明治25年(1892)書『花洛名所往来』など明治期の往来物にも影響力を持ち続けた。 【備考】『近世書林板元総覧』(日本書誌学大系76、青裳堂書店)によれば、武村嘉兵衛の活動期間は享保~寛政頃。(小泉吉永 記)
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