解題・説明
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【判型】大本1冊。 【作者】不明。 【年代等】室町中期作。室町末期書。 【概要】分類「往来物(古往来)」。武家奉公の心得に終始する6双12状の手紙模型文から成る古往来。第1状で武家奉公の道について尋ね、第2状で奉公の道が「正直」に尽きる旨を説くように、奉公する者の心得・教養・芸能、戦場での心得、分限に応じた処世法など、中世後期の武家子弟の有事・平時の心構え全般を諭す。第4状では「『童子教』云、生而無貴者、習終成智徳云々」と、『童子教』を引いて学問の大切さを諭す。三次市立図書館蔵『賢済往来』は大字・7行・無訓(所々返り点・送り仮名)で綴り、奥書に「持主・元智 南無阿弥陀仏一遍奉契候、嗚呼。筆者(在判)」と記す。また、愛知県西尾市立図書館・岩瀬文庫蔵『賢才往来』は本文を大字・5行・無訓で認め、筆者および書写年月を全く記さないが、室町末期書と推測される。同書は三次本の第5・6状に相当する2状を欠くほか、文章や使用語彙についても三次本と異同が目立つが、両者のうちいずれが古いかにわかに判定できない。 【備考】近年、慶長10年(1605)古写本『賢済往来』(小泉吉永蔵)が発見された。同書は三次本と同じ書名で全6双12状を収録し、識語に筆者、助左衛門(賢実)48歳が永松天清丸のために認めた旨を記す。これで本往来の現存本は3本となった。(小泉吉永 記)
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