解題・説明
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【判型】半紙本1冊。 【作者】不明。 【年代等】江戸後期書。 【概要】分類「往来物(地理科)」。寛文9年(1669)刊『江戸往来(自遣往来)』の改題本。「陽春之慶賀珍重々々、富貴万福幸甚々々。日々新而自他繁栄重畳、於に今者雖事旧候、猶更不可有休期候…」で始まる書簡風の文章で、(1)年始の挨拶、(2)千代田城内での年始の儀式および諸行事、(3)諸国より江戸に流入する物産の数々、(4)江戸府内の広大さ、諸方の町々、密集する武家屋敷と民家、(5)明暦・万治年間(1655~60)の玉川上水開通と両国橋架橋、(6)不忍池遊興の状況などを記して御代の泰平を謳歌する。その構成は、慶長17年(1612)作『駿河状(駿府往来)』の影響を受けているが、(3)~(6)は江戸独自の内容であり、地理科往来(地誌型)の代名詞となった。すなわち、本往来自身が多くの板を重ねて普及したほか、後続の地誌型往来の編集方式や記事内容に極めて大きな影響を及ぼした。 【備考】『江戸往来』の諸本は一般に外題が「江戸往来」、首題(内題)が「自遣往来」であるが、ほかに「燕都往来」「御江戸往来」「御江戸自遣往来」「東武往来」「吾妻往来」などの異称がある。(小泉吉永 記)
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