解題・説明
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【判型】中本1冊。 【作者】不明。 【年代等】元文(1736~40)頃作。明和2年(1765)刊。[江戸]鱗形屋孫兵衛板。 【概要】分類「往来物(地理科)」。異称刊本のほとんどが中本1冊。「御城外東者、和田倉・八重洲河岸・竜口・呉服橋・日本橋・堺町・杉森稲荷・鎧渡・霊巌島・新田島・永代八幡・三十三間堂…」と筆を起こし、千代田城を中心に東・巽・南・未・申・酉・戌・亥・北・丑・寅の11の方角毎に江戸府内の地名・名所等を記した往来。地名・町名90、神社仏閣75、橋15、川3、その他6の合計189の地名を列記する。末尾は「凡、三十里四方之間、六拾余州之群集、誠日々富貴而、万歳春、不可有際限候。恐惶謹言」と結ぶ。初板本系は本文を大字・5行・付訓で記し、明和2年板(現存せず)に続く寛政5年再板本(西村屋与八板)によれば、前付に「御江戸日本橋の風景」東叡山(寛永寺)図」「江戸日本橋より所々へ道のり細記」「玉川六景」、頭書に「江戸名所案内」、巻末に「十幹・十二支」を掲げる。 【備考】本書は明和2年板を始祖とする初板本系統を含め多数の板種が登場したほか、類書として天保9年(1838)刊『江戸方角註解』、天保14年刊『江戸方角愚注抄』、慶応2年(1866)刊『江戸方角名所杖』などの注釈書や、江戸後期刊『江戸方角』(成章堂書)、明治初年刊『東京方角』(成章堂書)などの一部改編版、また、明和3年刊『江戸方角独案内』、天保11年刊『〈東都地名案内〉女江戸方角』、嘉永元年(1848)刊『をみなえと方角』、元治元年(1864)刊『〈名所〉女江戸方角』、江戸後期刊『江戸方角地名記』、明治13年(1880)刊『開化東京方角』等の亜流が続出した。また、本書の異称も、「江戸方角」「〈文化再板〉江戸名所方角書」「〈再版補訂〉江戸方角名所附」「江戸名所(処)方角」「〈頭書画入〉江戸方角往来」「御江戸方角往来」など数多い。(小泉吉永 記)
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