解題・説明
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【判型】大本1冊。 【作者】貝原益軒作・序・跋。 【年代等】元禄5年(1692)11月自序・刊。[京都]大井躍鯉堂板。 【概要】分類「往来物(語彙科)」。異称『類合千字文』。朝鮮国正本『類合』をもとに、貝原益軒(1630-1714)が編んだ語彙・語句関係の手本。『類合』は『千字文』風の初歩教科書で、朝鮮成宗朝の碩儒であった徐居正(1420~1488)の作とされ、漢字1512字から構成されるが、これに、益軒が48字を補足して1560字とし、『千字文』にならって4字1句、390句の手本としたものが『千字類合』である(「千字」と称するが字数は異なるものの、漢字四言1句の『千字文』形式を踏む)。しかしながら本書独自の工夫は、「目録」に示されるように発端・乾坤・歳時・地理・衆艸・植木・五穀・菜蔬・羽族・毛群・鱗蟲・人品・都邑・人倫・身体・居所・調度・貨財・食器・雑器・饌具・服用・人事・物態の24項を設けて390句を配列した点にある。「壱貳参肆、伍陸柒捌、玖拾佰仟、萬億能察、字画初知、算数可達…」(*一部旧字を新字で代用。「一二三四、五六七八、九十百千、万億よく察し、字画初めて知り、算数達(とお)るべし」と読む)で始まる本文を楷書・大字・4行・付訓(しばしば左訓)で記し、手本兼読本用に編む。上記24項目中に、「人事」に関する語彙が多数に上る点から象徴されるように、日常の社会生活に関わる語彙に重点が置かれている。 【備考】本書の語彙分類は、益軒の言語観や当時の言語意識を知るヒントにもなる。(小泉吉永 記)
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