解題・説明
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【判型】半紙本1冊。 【作者】清谷(茶楽斎)画。 【年代等】文化6年(1809)1月刊。[京都]叶屋喜太郎ほか板。 【概要】分類「往来物(女子用)・洒落本」。周興嗣作『千字文』形式で、京都祇園・江戸新橋などの花街における慣習・料理・酒宴・調度・服飾等の語彙を集録した往来物。「色道豊年、金銀融通、洛陽繁昌、遊里滑稽、祇園縄手、冨永末吉、新橋宮川、河端石墻…」で始まる漢字4言250句を大字・4行(1行2句)・付訓で記し、本文中に遊里風俗図四葉を掲げる。基本的に単語の羅列であるが、「仲居准娘(なかいむすめ)、上品窈窕(じょうひんおとなしく)、遣逸高粋(いっこうすいをつかい)、震滅宗観(めっそうみえをゆする)」の一節は遊郭で接客する女性の風情を伝えるし、「鶏卵煮抜(たまごのにぬき)、釣鮑醪煎(つりがいのさかいり)、若狭鰻炙(わかさうなぎのかばやき)、棒鱈直鰹(ぼうだらのじきかつお)…」などは客をもてなす料理の様子も分かる。末尾では「月水停滞(つきのみずとどこおり)、推察妊娠(さればこそろっぷく)、苦界遁逃(つとめひかされて)、立派妾宅(りうとしたしょうたく)…」と客との間に子ができてて苦界の遊郭から逃れ、男児を出産、「婚姻成就(こんいんととのい)、表向御奥(おもてむきおんおくさま)、次第馴染(しだいになじみ)、家業能覚(かぎょうよくおぼえ)…」と俗世間にも馴染んでくるうちには、亭主も「郎君厳諦(むすこきつうきまり*気張り)、散在頓止(さんざいとんとやむ)」ようになり、商家主人も安堵し、日の昇る勢いで財産を殖やして、「愛度舞治(めでたくまいおさまり)、魑魅懼惶(いらいてなし)、長久万歳、福寿円満」と締め括る。 【備考】底本は初板本。本書の明治期後印本に[東京]藤井利八(松山堂)板があるほか、西村定雅(翠川子・粋川士*本館所蔵『遊女大学』作者)作、『遊状文章大成』(文化3年序)の巻末に合綴した本(小泉蔵)もある。なお、本文末尾に「文政五壬午年十二月八日、坂東藤太郎」の書き入れがある。(小泉吉永 記)
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