解題・説明
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【判型】大本1冊。 【作者】児島貞蔵(松月堂)書・跋。 【年代等】安永2年(1773)7月刊。[大阪]村上伊兵衛(本屋伊兵衛)板。 【概要】分類「往来物(女子用)」。跋文に「右、十二月章は、女子文通のたよりともならんと…」とあるように女子の手習用に編まれた手本で、四季の推移を主とした仮名文21通を収録する。「青柳のはるに媚、園の鴬もはつねもよほすけしき…」で始まる新年状以下、2月初午に招く文、3月弥生祝いの文、4月藤の花盛りに散策を誘う文、5月梅雨の季節に『源氏物語』を借りる文(ここまでは同一テーマの往復文)、6月以下は複数テーマで、6月が祇園会と庚申待ちの2通、7月が七夕祝儀と暑中見舞い、8月が十五夜の文と住吉詣に誘う文、9月が菊花の贈り物への礼状と秋の夜長の文、以下各月1通ずつとなり、10月亥の子祝儀、11月髪置き祝儀、12月歳暮見舞いの文までを収録する。9月状以下に散らし書きを用いるなど、手紙の書き方にも変化を持たせる。概ね本文を大字・3行・付訓で記す。 【備考】底本は刊記の一部が破損しているが、同板別本により板元名を補った。なお、本書の筆跡は、遊女風の独特なものである。『享保以後大阪出版書籍目録』によれば、作者は大阪長堀平右衛門町の住人で、明和6年に『東海消息』([大阪]本屋伊兵衛板)という往来物を著しているが未見。(小泉吉永 記)
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