解題・説明
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【判型】半紙本1冊。 【作者】小川保麿(玉水亭)作・書。 【年代等】天保10年(1839)3月書。江戸後期刊。刊行者不明。 【概要】分類「往来物(教訓科)」。子育ての重要性に鑑み、「幼稚を撫育(そだつる)道の種々(くさぐさ)、古人の金言を拾ひ輯めて」綴った往来。『劉向列女伝』による胎教から、出生後の養育(乳母の選び方、植木に喩えた育児の秘訣)、児童の家庭教育・躾、寺入り後の諸心得や質素倹約・信仰心・家職・礼儀作法までを教える。また、子供の「横着不道之悪作(わるさ)」を決して許すなと強調し、さらに、国法・家法の遵守、朋友や遊芸、女子教育、家庭教育の重要性と親の責任を縷々諭す。教育する側(親・師匠)と教育される側(童蒙)の双方の心得が渾然一体に記述されているのが特徴である。「凡有情者何莫不愛子(およそじょうあるもの、いずれかこをあいせざるはなし)。就中、人者為万物之霊(なかんずく、ひとはばんもつのれいにして)、実可助天地之化育者之(まことにてんちのかいくをたすくべきものの)、育我子教(わがこをそだておしゆるに)、以道事豈可忽哉(みちをもってすること、あにゆるやかなるべけんや)…」で始まる本文を大字・5行・付訓で記す。巻頭に孟母・楠木正成妻の故事と挿絵を掲げ、本文中にも育児心得の記事や挿絵(読書指南図、夫婦和睦図、姑に仕える嫁の図、似我蜂の喩えの図)を載せる。 【備考】底本には、本来あるはずの序文と口絵、また、刊記が欠けているので、天保15年板・嘉永元年板・無刊年板のいすれであるか不明。(小泉吉永 記)
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