解説
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清水寺(せいすいじ)は松代から南に入った谷間の奥、六供(ろっく)地区にある真言宗の寺院である。もとは現在地の西南の十二原にあったが、数次の火災後いまの地に移ったと伝えている。現在は耐震耐火の収蔵庫内に、この像をはじめとする平安時代中期の古仏像が安置されている。 木造千手(せんじゅ)観音立像はこの寺の本尊で、像高は180㎝。桂材の一木造りとしている。なお、全身に散らされた金箔は江戸時代の補修の際に施されたものである。 一木造りの手法は奈良時代に始まり、平安時代にいたって盛んになった彫法で、平安時代の中期に近づくにしたがって、干割れを防ぐため内刳(ぐ)りを施す事が一般的に行われた。 この像は内刳りがなく、一木造りの手法を用いている点や、衣の襞が大波と小波が交互に波打つ翻波式である点などに平安時代初期のいわゆる貞観様式の特徴が顕著にうかがわれる。しかし、平安時代初期のものは抑揚があって量感の強いものが多いのに対し、この像は量感を欠き、優美な姿態をとっている。このことから、実際の制作年代は平安時代中頃に下ると見られる。 県内の木彫り彫刻のなかでも、最古に属するものである。
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