解説
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西楽寺の真田隼人正(はやとのしょう)信重の霊屋(たまや)にあり、慶安元年(1648)霊屋建立と同時に、その本尊として安置されたものである。どこから請来(しょうらい)したものか明らかではないが、その作風から中央作のものと思われ、藤原末期の作である。 檜材の寄せ木造り(①)で内刳(ぐ)りを施しており、肉身は漆箔とする。像高96.7㎝。彫眼(ちょうがん)で、螺髪(らほつ)を小粒にそろえて彫りだし、髪際(はつさい)は一文字とし、水晶をはめ込んだ白毫(②びゃくごう)の特に大きいのが目を引く。印相(いんぞう)は上品(じょうぼん)下生(かしょう)を示している。 目は半眼で切れ長く、面貌が丸いのとあいまって慈悲深い相を示す。また、自然の丸みをもつ肩や体躯の肉付きもほどよく、穏和に形製されており、浄土信仰の阿弥陀如来にもっともかなった像である。 襟は胸前をひろげ、両肩から垂れて腹部の前に集まったひだはさざ波のような平行文であらわし、さらに正面中央を垂下して足元近くにいたって消滅する彫法は優美である。 光背(③)は飛天光を透かし彫りにした古舟形光背で、台座は二重敷(しき)茄子(なす)七重座とし、蓮台は筋蓮弁を葺いた踏分蓮華としている。台座・光背ともに現存しているのは珍しい。 注① 寄せ木造り・・一木造りに対し、木彫像の根幹部分である頭・体を二材以上の木を寄せて造る技法。 注② 白毫(びゃくごう)・・眉間(みけん)にある右巻きの白く輝く毛 注③ 光背・・・像の背後にあって、仏の光明を象徴する荘厳(しょうごん)(飾るもの)の一種。俗に後光ともいう。
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