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解説
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真田家の上田以来の上級家臣である旧松代藩士海野家に伝来するものである。同家にマリア観音、蝋燭立(ろうそくたて)に関する記録はないが、海野家代々の言い伝えによると、寛文十二年(1672)、番頭(ばんがしら)役を務めた海野源左衛門の妻が小幡家から嫁したとき持参したものだという。小幡氏がキリシタン信徒だったかどうかははっきりしない。 マリア観音は白磁(①はくじ)製で総高22.2㎝。古く唐時代から広く信仰された白衣観音で、赤子を胸の前に抱いて半跏(②はんか)し、両わきに二童子を従わせている姿は鬼子母神(きしもじん)と同じである。しかし、仏教では陶製白磁の仏像を造った例はなく、キリシタン教徒が仏像に粉飾してひそかに信仰する方便に用いたものであることは明らかで、この像がマリア観音と称されるのもそのためである。 蝋燭立は銅製で総高25㎝。太鼓(たいこ)型基台に床机(しょうぎ)型の脚台を設けている。 上に人が立ち、両手で旗竿を立て持っているが、その服装、旗の形状などはポルトガル風である。 制作年代、作者は不明だが、両者とも江戸時代初期に宣教師から伝わったものと考えられ、数少ないマリア観音のひとつとして、また付随する蝋燭立も併せて貴重な歴史資料である。
注①白磁(はくじ)・・白色の素地に透明釉を施した白色の磁器。 注②半跏(はんか)・・左足を踏み下げ、右足を折ってその足首を左膝にのせて座った形。
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