解説
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旧三河屋商店は、善光寺の表参道である中央通りから東側に100mほどの地点に位置している。この建物は、幅員22mの4車線道路に拡幅される県庁大門線の整備事業において、その敷地の一部がかかることになったが、善光寺門前町の代表的な商家の1つであるという歴史的経緯を考慮して、市で買い取り保存したものである。平成8年に店舗兼住宅及び土蔵群を90度回転させて東側の土地に曳移転し、拡幅した道路に北面させた。 三河屋商店は江戸時代中期からの菜種油製造問屋で、菜種油や蝋燭等を扱っており、戦前までは長野市内で唯一の大規模製造所であった。間口は8.75間と1棟としては善光寺門前町をはじめ、周辺地域にも見られない規模である。屋敷構え全体は軒裏まで漆喰で塗り固め、中庭を囲む土蔵群と塗り籠められた高い塀によって、隣接家屋からの類焼を防ぐ防火構造になっていた。 旧三河屋商店倉庫は切妻造、桟瓦葺、白漆喰仕上げで、規模は桁行3間半、梁間2間である。味噌蔵と倉庫はともに東面(移築前は北面)が海鼠壁となっている。これらの附属建物の建築年代は不明であるが、主屋と同年代に建てられたと考えられる。 現在は、長野市立博物館付属施設「ちょっ蔵おいらい館」として、門前町商家の保存展示を図るとともに、地域活性化のための複合多目的施設として活用が図られている。
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