解説
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真田山長国寺に伝来する「堀江物語絵巻」は岩佐又兵衛勝以(1578~1650)、もしくはその工房の作である。古浄瑠璃を題材とした絵巻は複数伝来し、本絵巻はそのうちの「堀江物語」を詞書と絵により描いたものである。もとは一揃いであったが、現在は香雪美術館、京都国立博物館、個人などに分蔵されており、本絵巻も残欠本のひとつとして貴重である。 「堀江物語」は下野の豪族である堀江三郎の子・太郎が、非業の死を遂げた両親の敵を討ち、家を再興するまでの物語で、本絵巻は物語のクライマックスにあたる末尾に該当する。金銀をふんだんにつかった極彩色で描かれ、驚異的な細密描写がひときわ目を引く。制作年については、諸説あるが寛永年間(1624~1644)を中心として前後十年程の間とされている。 長国寺は松代藩真田家の国元における菩提寺であることから、真田家からの寄進品が多く残り、本絵巻もそのひとつと考えられ、真田家伝来の大名道具であった可能性がある。 本絵巻はもともとは二巻であったものを平成九年に修復し、一巻(33.6㎝×1343.8㎝)として表装し直したため、元箱と元表装の一部も共に伝来している。元箱蓋表には「普請絵軸之物」と墨書されており、本作品の伝来経緯を知る上で重要な資料である。 岩佐又兵衛筆による絵巻群のひとつとして貴重であり、美術品としての価値も高いものである。
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