解説
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善光寺参道入り口の左側に、参道に向かって門を設け、築地塀(ついじべい)をめぐらした大きな殿舎がある。これが大本願で、善光寺住職尼上人の居所である。浄土宗に属しており、山内の浄土宗の寺院14坊を付随し、広大な邸内に宝物館を設けて数々の宝物を陳列している。 この伐折羅(ばざら)大将は、聖徳太子像とともに戸隠山内にあったが、明治初年神仏分離(①)で同地を離れ、大本願の所有となったものである。 像は一木造りで檜(ひのき)材を用いている。単髻(たんけい)で側髪を逆立てて忿怒(ふんぬ)の相を示し、右腕のひじを屈して手に宝剣を握り、左手はこぶしをつくって腰につけ、両足を開いて立つ姿勢をとる。 宝髻(ほうけい)・焔髪(えんぱつ)ともに毛筋をあらわさず、着衣は肩衣と裳だけの半裸身の天部形(②)である。 肉取り豊かだが、彫り口などは地方作の濃いものである。
注① 神仏分離・・維新政府の宗教政策。祭政一致をめざして、政治理念の中心に神道と天皇制をすえた。仏教を神道から分離・排斥したため、各地で仏堂、仏像などが破壊され、僧侶(そうりょ)を抑圧するなど廃仏(はいぶつ)毀釈(きしゃく)がおこった。
注② 天部形・・・天は如来や菩薩よりも低い地位にあって、おもに仏法守護の役割を持つ諸神(四天王・十二神将など)。その性格上、武装した姿に造られるが、一般的な天部形というのは天衣を懸け裳をまとうだけで上半身があらわである。
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