解説
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大本願宝物館に展示されている。明治初年までは霊場戸隠山内にあったが、明治維新の神仏分離によって山内を離れ、のち大本願に入ったものである。
戸隠山は善光寺と並ぶ霊地で、平安時代からその名が知られる。鎌倉時代は同山がもっとも栄え、多数の仏像・仏器・経典などがあったが、維新の廃仏毀釈によってその多くの文化財を失った。その中で、この聖徳太子像は同寺所有の伐折羅(ばざら)大将とともに難を免れたもののひとつである。 像は檜材の一木造りで、像高68㎝。帽子をかぶり、袍(ほう)に袴(はかま)をつける。 あご髭(ひげ)をたくわえ、左腕はひじを曲げて手に巻物を握り、右腕を下げて手前に笏(しゃく)を持って立つ。聖徳太子像と伝えるが、形相からみて婆藪(①ばすう)仙人(せんにん)であろう。 袍・袴の衣文(えもん)はおおまかで、正面・背部とも、腰から下は左右両側から中央に寄せてひだをたたんでいる。その先端を消えるように終わらせている彫り口は美しく、肉取り豊かな姿態と共に優れた技巧を示している。もと胡粉地彩色だったが、いまはほとんどはげ落ちている。
注①婆藪(ばすう)仙人(せんにん)・・二十八部衆に属し、千手観音の眷属(けんぞく)で、行者を守護する善神である。 注②胡粉(ごふん)・・・・貝殻を焼いて粉末にした白色顔料。
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