解説
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中澤時計本店は、長野駅から善光寺へと続く長野市中央通りに面しており、明治10年から時計店を営んでいる。 現在の建物は大正13年の市区改正による善光寺門前、中央通りの拡幅に際して建て替えられた。その後、1階店舗部分については何度か改修されたが、住宅部分にはほとんど手が加えられていない。角地に位置し、善光寺に向けた北西面を隅切りとしている。 構造形式は木造2階建て、寄棟造平入り、銅板葺きで建築面積は158㎡で登録部分は1階153㎡、2階138㎡。通りに面した外壁は、同じ大門町にある登録文化財「藤屋旅館」と同じく、鉄筋コンクリートの洗出仕上げで、木造2階建てとしては各階高が非常に高く周辺に類を見ない造りになっており、細部意匠はセセッション(注)の流れを汲む。 設計は長野市嘱託建築技師の本田政蔵、施工は大工棟梁・池田市郎で、当時の最先端の建築様式を取り入れた、施主、設計者、大工、洗出職人たちの意気込みが感じられる建物である。
(注)セセッション:19世紀末のヨーロッパではじまった絵画・建築・工芸の革新運動。過去の芸術様式から分離して、生活や機能と結びついた新しい造形芸術の創造をめざした。
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