解題・説明
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稲作を中心とした農耕の四季と地引き網の様子を描いた図である。三方を海に囲まれている千葉県の産業を語るに、農業を抜きにして語れない。従って海岸に隣接した市町村の寺社には、漁業関係の絵馬が奉納されている例が少なくない。九十九里浜の漁業は、弘治元年(1555)紀州の人、西宮九助が南白亀(なばき)(現在の白子町古所)漂流し、地引網漁法を伝えたことに始まると伝えられている。江戸時代から、九十九里浜を中心に県下太平洋沿岸は幾度も豊漁期が訪れ、明治20~30年代にかけて第5期の豊漁期が訪れている。絵馬の年代は定かでないが、年号は明治と読み取れている。豊漁期との関係から推察するなら明治中期の奉納と考えられる。磯では豊漁の地引き網が引かれ、岡では代かき、種まき、田植え、収穫といった活気に満ちた大地主(網主)の四季生活が描かれている。
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