解題・説明
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桜花の下に甲冑姿で座し、歌を詠む忠度(ただのり)とその部下達を描いた図である。平忠度は、平安末期の武将で平忠盛の七男でありまた清盛の弟でもある。勇武の士ながら文芸に心を寄せ、藤原俊成を師として和歌を学んだ。『平家物語』第7巻15に載る平家都落ちの際、夜更けに師俊成の屋敷を訪ねて暇乞い(いとまごい)し、生涯の思い出に自作の歌が勅撰集(ちょくせんしゅう)に入れられることを望んで、詠草を託して西海に去った。俊成はそのうちの一首「さざなみや しがの都は あれにしを 昔ながらのやまざくらかな」を読人知らずとして『千載集』に入れたという逸話がある。「さざなみや」の逸話は、『源平盛衰記図絵』の挿絵に絵画化され、歴史画の題材として錦絵にも見られる。
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