解題・説明
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小金原(こがねはら)の牧(現在の鎌ヶ谷市を中心とした地域)で大規模な鹿狩りを行っている場面を描いた図である。享保元年(1716)の6月に徳川吉宗が8代将軍に就任すると、「享保の改革」が実施され、施策の一つとして武道に精進することが奨励された。将軍自ら鷹狩や鹿狩を行い、江戸から近い小金原はしばしば巻狩りの舞台となった。享保期以降、将軍が出張して行った鹿狩は、享保10年(1725)、同11年、寛政7年(1795)、嘉永2年(1849)の4回行われている。『徳川実紀』の享保10年3月27日の記述によると、この日の獲物は、猪3頭、鹿800頭、狼1頭、雉10羽とある。騎馬勢子(せこ)、歩行勢子、立切勢子人足として動員された数は10万人を超す大規模な時もあった。図の左方中央には、一段高い将軍の御立場(おたつば)が設けられているのが見える。画面は黒ずんでいるが、実に繊細に描きこまれた秀品である。
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