定 八幡山下町中
一、当所中為楽市申付上者、
諸座・諸役・諸公事悉免許事
一、往還之商人、上海道相留之、上下共
至当町可寄宿、并船之
上下儀、近遍之商舟相留之、当
浦江可出入、但荷物於付下者、
可為荷物主次第事
一、普請并伝馬免除之事、[付、陣・在京・留守難去用、可合力事]
一、火事之儀、於付火者、其亭主
不可科懸、至自火者、遂糺明、其身
可追放、但依事之躰可有軽重事
一、咎人之儀、借家并雖為同家、
亭主其仔細不知、不及口入者、亭主
不可有其科、至犯過之輩者、遂糺
明可処罪過事
一、諸色買物之儀、縦雖為盗物、買
主不知之者、不可有罪科、次彼盗賊
人於引付者、任古法臓物可返付事
一、分領中徳政雖行之、当町免
許之上者、於当町借遣米銭者、
不可棄破事
一、天正拾年已前、売懸・買
懸・手付已下之事者、可為棄破、
雖然質物・預物失セ不申、訴
人於有之者、遂糺明可相渡事
一、喧嘩・口論并国質・所質・押買・
押売・宿之押借已下、一切停止之事
一、至町中、譴責使・同打入之儀、
林新左衛門尉・河瀬四郎左衛門尉両人仁
相届之、以糺明之上可申付事
一、於町並居住之輩者、雖為奉公
人并諸職人、家並之役儀免
除之事[付、加扶持召遣諸職人等各別事]
一、博労之儀、国中馬売買、悉於
当町可仕之事[付、当所仁有之船儀、公儀并当城用所申付外、免許事]
一、在々所々諸市、当町可相引事
右条々、若有違背之族者、速
可処厳科者也
天正拾四年六月 日
(花押)
【読み下し】
定 八幡山下町中
一、当所中楽市として申しつける上は、
諸座・諸役・諸公事などことごとく免許の事
一、往還の商人、上海道これをあい留め、上下とも
当町に至り寄宿すべし、ならびに船の
上下儀、近遍の商舟これをあい留め、当浦へ
出入りすべし、ただし荷物付けおろしにおいては、
荷主次第たるべき事
一、普請ならびに伝馬免除の事、[つけたり、陣・在京・留守去りがたき用、合力いたすべき事]
一、火事の儀、付け火においては、その亭主
科懸けべからず、自火に至らば糺明を遂げ、その身
追放すべし、ただし事の躰によりて軽重あるべき事
一、咎人の儀、借家ならびに同家たるといえども、
亭主その仔細を知らず、口入に及ばざれば、亭主
その科あるべからず、犯過の輩に至らば、糺明を遂げ
罪過処すべき事
一、諸色買物の儀、たとい盗物たるといえども、買い主
これを知らざれば、罪科あるべからず、ついでかの盗賊人
引きつけるにおいては、古法に任せ臓物これを返しつけるべき事
一、分領中徳政これを行うといえども、当町
免許の上は、当町において借り遣い米銭は、
棄破あるべからず事
一、天正拾年已前、売り懸け・買い懸け・
手付け已下の事は、棄破たるべし、
然るに質物・預け物失わせ申さずといえども、訴人
これあるにおいては、糺明を遂げあい渡すべき事
一、喧嘩・口論ならびに国質・所質・押買・
押売・宿の押借已下、一切停止の事
一、町中に至り、譴責使・同打ち入りの儀、
林新左衛門尉・河瀬四郎左衛門尉両人に
これをあい届け、糺明の上をもって申し付けるべき事
一、町並居住の輩においては、奉公人
ならびに諸職人たるといえども、家並の役儀
免除の事[つけたり、加扶持・召し遣い諸職人など各別事]
一、博労の儀、国中馬売買、ことごとく
当町においてこれを仕るべき事[つけたり、当所にこれある船の儀、公儀ならびに当城用所申しつけらるほか、免許の事]
一、在々所々諸市、当町へあい引くべき事
右条々、もし違背の族あれば、
速やかに厳科 処すべき也
天正拾四年六月 日
(花押)
【要約】
定 八幡山下町中
一、当所(八幡山城下)は楽市とし、
諸座は廃止し、諸役・諸公事などといった負担はことごとく免除する。
一、往還の商人、上海道(中山道)の通行をやめて、上り下り(の商人)とも
当町に立ち寄り寄宿すること。ならびに船の
上り下りについても、近遍を通る商舟は八幡山城下に船を停留に、当浦へ
出入りすること。ただし荷物などの付けおろしは、
荷主次第である
一、普請ならびに伝馬役は免除する。[つけたり、ただし出陣中や・城主在京など留守の時は、合力すること]
一、火事について、放火された場合、その亭主は
責任を問われない。自火の場合は調査の上、亭主を
追放する。ただし、事の次第によって
(罪の)軽重はある。
一、咎人について、借屋ならびに同居であっても、
亭主そのことを知らず、仲介などをしなければ、亭主は
その罪を問われない。犯罪者については、尋問し
罪科に処す。
一、色々な品物の買物について、たとえその品が盗品だったとしても、買い主
このことを知らなければ、罪に問われない。次に盗賊人を
捕まえた場合、古法に任せ臓物(盗んだ品物)は返させること。
一、秀次所領ないで徳政が実施されても、当町では
免除の上、当町内での米銭の貸し借りについては、
棄破しないこと。
一、天正拾年(安土城下時代)以前の、売り懸け・買い懸け・
手付け(金)については、棄破すること。
質物・預り物などは失わせないが、訴人が
いる場合は、調査の上あい渡すこと。
一、喧嘩・口論ならびに国質・所質・押買・
押売・宿の押借といった行為は一切禁止する。
一、町中で譴責使(年貢等の未進を厳しく咎める人)が打ち入りする場合は、
林新左衛門尉・河瀬四郎左衛門尉両人に
そのことを届け出、調査の上許可する。
一、町並に居住の者は、奉公人
ならびに諸職人たるといえども、家並役は
免除する[つけたり、扶持を受けて居住している者、ならびに御用の諸職人などは、その対象でない]
一、博労の儀、国中の馬の売買は、全て
八幡山城下で行うこと[つけたり、当所にある船について、公儀や(八幡山)城の用を申しつけるが、そのほか(の役)は免除する]
一、領内及び周辺で行われている複数の市は、当町内で行うこと
右条々、もし違背の者がいれば、
速やかに厳罰に処すものである。
天正拾四年六月 日
(花押)