解題・説明
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長崎遊学中に撮影したと思われる一葉の写真は、当時の西園寺の境遇を写し出していると見ることができる。頭だけは今さらどうかくすこともできない公家のまげであり、月代(さかやき)をしていない。しかし長刀をつき、袖を二の腕までまき上げ、袴の裾もたくし上げ、高下駄をはいた姿は、どう見ても若侍を気取った姿だ。そこに若き西園寺の公家脱出の願望を見てよいであろう。長崎遊学中のこの一枚の写真は、自由な西洋に対するあこがれとともに、古格と先例にしばられた宮中や公家の世界にたいする嫌悪を感じさせるものがあったといってよいだろう。
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