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さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―
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醉へば寂しがりやになる夫なりき僞名してかけ來し電話切れど危ふし
いさぎよく無視されたきに醉へばまた逢ひたしなどと言ふ夜半の電話に
二年經て机の位置も書棚もそのままなるを不思議の如く夫は眺むる
共に死なむと言ふ夫を宥め帰しやる冷たきわれと醒めて思ふや
死ぬ時はひとりで死ぬと言ひ切りてこみあぐる涙堪へむとしたり
死ぬことしか言はず蹌跟たる夫にいつまでも待つと告ぐる外なかりき
ドラマの中の女ならば如何にか哭きたらむ灯を消してわれの眠らむとする
かかる場合に保障されゐる妻の權利を主張せざれば古しと言はる
ひとたびは葛藤の中に身を投じ質さねばならぬ理路とも思ふ
妻とふ名に執する如き生き方も苦しみてわが超えねばならぬ
舊姓に戻りて故鄕へ歸リ住まむかと思ふ日あるを誰にも言はず
いつまでも待つと言ひしかば鎭まりて歸りゆきしかそれより逢はず
打ち明けらるることを期待しゐる友か探る如くわが部屋を見廻す
人の前に涙見せねば不幸せにもたやすく堪ふるわれと思はる
見えざるものを見つめて生くる如きわれに堪へ得ざりし夫と今は思ふも
一枚の敎員免許状が今は終生の寄りどと思ひ涙こぼれつ
さまざまの見方されゐるわれと知る醉ひし友に今日は貞女と呼ばる
忽ちに遁しし幸よ用のなくなりしリキュールグラスを磨く
緩慢な悲しみに心を委ぬる如く夫のマンドリンつまびきて見つ
蚊遣りの匂ひ殘れる部屋にめざめゐつ寂しき朝にも馴れて久しき
いつとなく寂しき雰圍氣漂はすわれならずやと思ふ勤め終へ來て
屈折せし意識に澱む夜の心長くかかりてスカートの襞をたためり
身の不幸など歌ふべき時代かと苛みし人あり日を經て心展け來
生きてゆく幅を少しでもひろげたく昇任試驗受けて見むとす
公務員法讀み終へてそのまま眠りしか夜の明けて試驗は今日ぞと思ふ
自信持てとつねにのたまへるを思ひ出づ訴願法の問題解き進みつつ
パラソルをたたみて入り來し妹の聲はづみわれの合格を告ぐ
敎員の資格持つも一つのゆとりとしのびのびとわが生きてゆきたし
遠けれど湖のある村と知れば明日の出張をたのしみて寢る
草生分けて道に出づればイムメン湖の如きみづうみ木の間に見え來
水門を閉ぢし人も去りたる湖に風吹けばまたささなみのたつ
穂草そよぐ道のかたへに少女ひとり畫架たてて白きホテルを描く
みづうみの旅より夜半に歸り來て思ふ寂しき晩年のこと
窓に匂ふ月あり固執せぬ性をもつこともわれのみの知る幸として
運命に從順に見えてはがゆしと言はれしを幾日噛みしめて過ぐ
陽の昃れば忽ちデュフィの海となりスカートをふくらませてわれも佇つ
足もとの砂冷えて來て昏るる海わが畏れゐし褐色となる
今は誰にも見することなきわが素顏霧笛は鳴れり夜の海原に
月の夜の潮鳴り低し出でゆかば身近にあらむ死と思ふ時の間
身代りに何を沈めて戻るべきいどむ如く來る夜の満ち潮
今朝の夢の終末を呑める海の色を怖れてゐしがやがて眠りぬ
覺めかけてまた夢見つつ幾たびか潮滿ち來てわが身をひたす
アルフレッドと心に呼びゐてさりげなく遠くかすめる島の名を問ふ
わが中の脆き一面を怖るるに近よりて不意に君は肩をたたく
亂されぬ理路を信じて生き得るや髪とかしつつ朝より疲る
不満の種をつねに探し來るごとき君語り終るを待ちつつ寂し
窓際の焜爐にひねもす湯はたぎる異動期過ぎて靜かになれる事務室
慢心してゐしかと寂し刷り上れるパンフレットの誤植數へゆきつつ
われ次第にて明るくも暗くもなる職場と思ふ或る日は負ひめの如く
妹の届けくれし木犀匂ふ部屋假名習はむと墨をすりゆく
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