目次
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全短歌(歌集等)
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まぼろしの椅子
まなうらの像
虐げらるる程
言傳てもちて
殻とぢて
わが敎へし
みづからの
焦點と
アンカットの
氣づかぬ間に
舞曲の
悲劇も今は
何事も
閉ぢこめられゐて
わが夢に
散漫に
00125
虐げらるる程強くなる女よといふ噂歸り來てひとり炭火をおこす
シイタゲラルルホド ツヨクナルオンナヨト イウウワサ カエリキテヒトリ スミビヲオコス
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.50
【初出】
『短歌研究』 1955.4 まなうらの像 (1)
00126
言傳てもちて來し友の幼な子わが炊ぐ釜の小さきを驚きて言ふ
コトヅテモチテ コシトモノオサナゴ ワガカシグ カマノチイサキヲ オドロキテイフ
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.50
【初出】
『短歌研究』 1955.4 まなうらの像 (2)
00127
殻とぢて竦める如き日のわれを不意に來し母に見せてしまひぬ
カラトヂテ スクメルゴトキ ヒノワレヲ フイニキシハハニ ミセテシマヒヌ
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.51
【初出】
『短歌研究』 1955.4 まなうらの像 (3)
00128
わが敎へし舟唄今も忘れずと何故書き來しや母となれる教へ子
ワガオシヘシ バルカロールイマモ ワスレズト ナゼカキコシヤハハト ナレルオシヘゴ
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.51
【初出】
『短歌研究』 1955.4 まなうらの像 (6)
00129
みづからの道狹めつつ生きゆくや亞流と言はれむを何より怖る
ミヅカラノ ミチセバメツツ イキユクヤ アリュウトイハレムヲ ナニヨリオソル
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.51
【初出】
『短歌研究』 1955.4 まなうらの像 (10)
00130
焦點となすを懼るるわがこころ賜びし詩集の背文字をみつむ
ショウテント ナスヲオソルル ワガココロ タビシシシュウノ セモジヲミツム
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.52
【初出】
『短歌研究』 1955.4 まなうらの像 (8)
00131
アンカットのまま重ねおく詩集一つ徒勞とも思ふわが仕事ふえゆく
アンカットノ ママカサネオク シシュウヒトツ トロウトモオモフワガ シゴトフエユク
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.52
【初出】
『形成』 1955.3 夜の落葉 (6)
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『短歌研究』 1955.4 まなうらの像 (9)
00132
氣づかぬ間に陽氣にものを言ひてしまふもう一人のわれを怖れて思ふ
キヅカヌマニ ヨウキニモノヲ イヒテシマフ モウヒトリノワレヲ オソレテオモフ
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.52
【初出】
『短歌研究』 1955.4 まなうらの像 (11)
00133
舞曲のレコードかけつつ夕餉なす放恣とも思ふかかる孤獨の處理は
シヤコンヌノ レコードカケツツ ユウゲナス ホウシトモオモフカカル コドクノショリハ
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.53
【初出】
『短歌研究』 1955.4 まなうらの像 (12)
00134
悲劇も今はわれの中に消化し去られつと思ひひそめて或る夜はゐたり
ヒゲキモイマハ ワレノナカニショウカシ サラレツト オモヒヒソメテ アルヨハヰタリ
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.53
【初出】
『短歌研究』 1955.4 まなうらの像 (16)
00135
何事も抽象化してしまふわれと思ふ充たされゆくやながき空白も
ナニゴトモ チュウショウカシテシマフ ワレトオモフ ミタサレユクヤ ナガキクウハクモ
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.53
【初出】
『短歌研究』 1955.4 まなうらの像 (15)
00136
閉ぢこめられゐて秘かに爪とぐ如き身と疊掃きつつ寂しき日なり
トヂコメラレヰテ ヒソカニツメトグ ゴトキミト タタミハキツツ サビシキヒナリ
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.54
【初出】
『短歌研究』 1955.4 まなうらの像 (14)
00137
わが夢に夜々ひらく嚝野を翳のごとよぎるはいまだたれとも知れず
ワガユメニ ヨヨヒラクコウヤヲ カゲノゴト ヨギルハイマダ タレトモシレズ
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.54
【初出】
『短歌研究』 1955.4 まなうらの像 (13)
00138
散漫になる夜の心まどろめば聖アンネの像がまなうらに來る
サンマンニ ナルヨノココロ マドロメバ セイアンネノゾウガ マナウラニクル
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.54
【初出】
『形成』 1955.3 夜の落葉 (5)
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『短歌研究』 1955.4 まなうらの像 (5)