目次
/
全短歌(歌集等)
/
不文の掟
売子木の花
洗濯機も
押し寄せて
検閲の
みづからに
校正に
伏せ字とれて
校了に
目測を
00726
洗濯機も買ひ替へて夏となる職場一人は庭に売子木の花掃く
センタクキモ カヒカヘテナツト ナルショクバ ヒトリハニワニ エゴノハナハク
『不文の掟』(四季書房 1960) p.102
【初出】
『短歌』 1958.7 夢うら (7)
00727
押し寄せて来む仕事ありフェルトの造花つなぐ一日を緩衝として
オシヨセテ コムシゴトアリ フェルトノ ゾウカツナグヒトヒヲ カンショウトシテ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.102
【初出】
『短歌』 1958.7 夢うら (6)
00728
検閲のすみし帳簿を括りゐて区切りつかぬ思ひいつまでか持つ
ケンエツノ スミシチョウボヲ ククリヰテ クギリツカヌオモヒ イツマデカモツ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.103
【初出】 『形成』 1958.9 夏日 (5) /
『短歌』 逸れ矢 (5)
00729
みづからに正すいかなる符牒あらむ赤きインクをペンにみたして
ミヅカラニ タダスイカナル フチョウアラム アカキインクヲ ペンニミタシテ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.103
【初出】
『短歌』 1958.3 夜陰のおと (10)
00730
校正に倦みて思へば石工は石に潰ゆる夢なども見む
コウセイニ ウミテオモヘバ セッコウハ イシニツヒユル ユメナドモミム
『不文の掟』(四季書房 1960) p.103
【初出】
『短歌』 1958.3 夜陰のおと (12)
00731
伏せ字とれて戻り来し校正刷見直すと散らばれるわが五体あつまる
フセジトレテ モドリコシゲラ ミナオスト チラバレルワガ ゴタイアツマル
『不文の掟』(四季書房 1960) p.104
【初出】
『短歌』 1958.7 夢うら (8)
00732
校了にゆるぶ心か硝子戸の外は昏れゐてわが影うつる
コウリョウニ ユルブココロカ ガラスドノ ソトハクレヰテ ワガカゲウツル
『不文の掟』(四季書房 1960) p.104
【初出】
『形成』 1958.9 夏日 (6)
00733
目測を誤ることもたのしくて霧ふかき夜のネオンを仰ぐ
モクソクヲ アヤマルコトモ タノシクテ キリフカキヨノ ネオンヲアオグ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.104
【初出】
『形成』 1958.11 秋意 (5)